【日本医業経営コンサルタント協会福井県支部 支部長 杉原博司】
2017年が始まりました。今年1年間は16年度診療報酬改定の検証を基に、18年度改定に向けた議論が行われます。当然、地域包括ケア病棟についても、手術料の出来高算定による影響や扱われる疾患などが検証されるかと思います。中央社会保険医療協議会(中医協)、特に「入院医療等の調査・評価分科会」のこれからの議論には注目です。
①急性期病床の一部を地域包括ケア病棟に転換する
②地域包括ケア病棟を主力として運用する
③ケアミックス病院で地域包括ケア病棟を運用する
④療養病床から地域包括ケア病棟に転換する
-の4つの視点から、地域包括ケア病棟の運用について検証していきます。地域包括ケア病棟の導入を検討中の病院さんや、既に導入したものの思ったような効果が得られない病院さんの一助となれば幸いです。
■導入よりも、その後の運用が難しい?
今回のテーマは 「視点①:急性期病床(7対1、10対1)の一部を地域包括ケア病棟に転換する」 ケースです。急性期病棟を主体とする病院での導入と運用方法について、改めて考えてみます(回復期リハビリテーション病棟や療養病床を併せ持つ病院のケースは「③ケアミックス病院…」の視点で検証します)。
16年度改定で「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)が見直され、急性期病床への締め付けが強まったことによって、これまで地域包括ケア病棟に見向きもしなかったような病床規模の大きい病院さんにも、導入の動きが出始めています。
急性期の一部病棟を地域包括ケア病棟に転換する際、自院に適した病床数の設定に関しては、以前の 連載「今こそ考える地域包括ケア病棟」 や、前回の 「地域包括ケア病棟は導入検討の最終段階へ」 で紹介した看護必要度から必要病床数を設定する方法が参考になるでしょう。
ところが、地域包括ケア病棟に転換した後、実際の運用で困っている病院さんがいらっしゃいます。「うちはトップダウンでスムーズに導入できたものの、病床管理で院内がもめている」「事前に予測したような収益改善につながっていない」と言うのです。
■「思っていたのと違う」になるのはなぜか
16年度改定後は、これまで以上に看護必要度の低い入院患者を急性期病棟から減らさなければなりません。つまり、 どの患者を、どのタイミングで地域包括ケア病棟へ転棟させるか が病棟運用の重要なポイントとなります。その基準を明確に決めておかなければ、病棟転換によるメリットを十分に生かせず、事前に想定していたような収入が確保できません。
しかし、ケアミックス型でない急性期病院は多くの場合、一定の急性期治療を終えた患者を連携病院へ転院させることで平均在院日数や看護必要度の要件をクリアしてきており、転科での転棟はあっても同科での転棟は、ほとんど経験がありません。そのため、病棟運用が混乱しがちです。せっかく「総合入院体制加算」や「集中治療室等」を犠牲にして地域包括ケア病棟を導入したのに、大きく減収となってはいけません。机上の予測は最大効果だとしても、やはり現実もその予測に近づける努力が必要です。
次回配信は1月25日5:00を予定しています
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