【株式会社メディチュア代表取締役 渡辺優】
■一般病床の利用率低下は全国的なもの
新年らしく病院経営についてマクロな視点で考えたい。前回、高齢化が進む環境下でも、療養病床の病床利用率が低下している現象に対し、病院が取り組める余地について検討した。今回は、一般病床についても同様の分析を行い、病院個別の経営戦略について考える。
図1 一般病床の病床利用率(利用率が高いほど色が濃い)
左:2010年右:2015年
厚生労働省「病院報告」(平成22年、27年)を基に作成
左右の地図は同じ基準で塗り分けている。左の日本列島の色は濃く、右は薄い。日本全体で病床利用率が低下していることが見えてくる。病床利用率の低下に極端な地域差、偏りは見られないことから、高齢化の進展度合いや疾患構成の差異等の影響以上に、全国一律で課せられる診療報酬改定等への対応による影響が大きいのかもしれない。
前回同様、10年を基準とした15年の病床利用率の変化を見た=図2=。
図2 一般病床利用率の変化(2010年に対する2015年の変化)
厚生労働省「病院報告」(平成22年、27年)を基に作成
その結果、ほとんどの都道府県で病床利用率が低下している。増加しているのは(緑系)、静岡・滋賀・沖縄の3県のみである。この結果から、病床機能報告や地域医療構想等で指摘されているような病床過剰地域だけでなく、病床不足地域でも病床利用率は低下しており、病院経営は厳しくなっている可能性が高い。この結果は筆者の感覚にも近い。
■「高回転化」への圧力上昇は間違いない
一般病床は在院日数の短縮が続いている=グラフ1=。
グラフ1 一般病床の平均在院日数推移
厚生労働省「病院報告」(平成20、22、27年)を基に作成
この在院日数短縮化・病床高回転化に例外はない。例えば、大学病院(DPC対象病院Ⅰ群)であっても在院日数は年々短くなっている=グラフ2=。むしろ在院日数の短縮度合いで見れば、10年から14年にかけて、一番減少している=グラフ3=。
次回配信は1月18日5:00を予定しています
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