【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 准教授 京極真】
第9回「医師とケアマネが対立、どう連携する」と第8回「難しい他組織との連携、どうしたらいい?」では、日ごろ密な接点がない人たちの間で生じる信念対立の事例を取り上げました。
信念対立は同一の組織内だけでなく、外部の組織に属する人とも生じる問題です。人間はそれぞれ異なる世界観の中で生きているので、普段から顔を合わせていても、そうでなくても、人間関係のトラブルは起こるものです。しかし、「あの人と一緒に仕事すると、しんどい。ちょっと苦手…」「何だかモヤモヤするな…」と感じたとき、日常的につながりのある間柄でないが故に問題がはっきりせず、どうにも対処しにくいという面があります。
今回は、 普段あまりかかわりがない人たちとうまく連携するためのコツ (信念対立解明アプローチ)について解説します。実践を助けるツールとして 「ABCR-14」=画像= についても説明しますので、ダウンロードしておいてください。
■コツはやっぱり「状況と目的の明確化」
結論から言うと、日ごろ接点がない人たちと連携するコツは、 「状況と目的の明確化」 が一番のポイントになってきます。これは第7回( 「初心者でもできるスムーズな連携のコツ」 )で紹介したものと基本的に同じです。後述するように、今回は力点の置き方こそ少し異なりますが、ほぼ同じストラテジーで対応できます。
この連載を読んでこられた読者の皆さんは、「またその話か!」と思うかもしれません。しかし、問題の内実が変わっても同型の技法で対応できる柔軟な応用力が、信念対立解明アプローチの良いところです。これは多職種連携スキルを学習する負担を減らして、実践に専念できる時間を確保するというメリットにつながります。なので、最も基本的な技法「状況と目的の明確化」は、繰り返し確認していきましょう。
さて、信念対立とは、立場の違いに配慮できずに生じる問題です。例えば、医師は「ケアマネジャーは医学的知識が乏しいから信用できない」と考え、ケアマネは「医師は疾患や障害しか診ない。人間を診ていないから不信感を覚える」と感じたとしましょう。こういう話は、実際の現場でよくありがちですよね。こうした人間関係に陥る理由は、それぞれがお互いの立場に配慮できないところに求められます。
次回配信は1月20日5:00を予定しています
(残り2279字 / 全3279字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】
【関連キーワード】