【千葉大学医学部附属病院病院長企画室長・病院長補佐・特任教授 井上貴裕】
1.本連載で今まで主張してきたこと
2012年度診療報酬改定で基礎係数が設定され、医療機関群による評価が始まった。Ⅱ群は大学病院本院に準じた診療密度と一定の機能を有する病院とされ、多くの急性期病院がⅡ群を目指している現実がある。本連載でもⅡ群病院の診療機能について何度も取り上げてきた。
第22回では、Ⅱ群病院の診療実績はⅠ群を凌ぐほどに優れていることを明らかにした。ただし、そこでいう診療実績とは、100床当たりの全身麻酔件数や救急車搬送入院件数などのボリュームによる評価であった=グラフ=。
平成27年度第7回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会を基に作成
さらに 第31回 では、Ⅱ群のアウトカムについて検証し、急性心筋梗塞を例に取ると、Ⅱ群病院はⅢ群よりも死亡率は若干低いものの、医療資源投入量が著しく多いことを明らかにした。投じている医療資源からすれば、効率が悪いのがⅡ群病院でもある。診療密度が高いのがⅡ群病院であるという制度設計からすれば当然といえるが、無駄な医療資源投入を助長しかねず、医療の質が高いことが重要であることを指摘した。つまり、Ⅱ群だからよいというわけではなく、別の生き方もあるわけだ( 連載第29回 )。
基礎係数が損失補填的な意味合いを有していることからすれば、医療資源投入量が多い病院に係数をつけることは決して矛盾する政策ではないが、医療資源投入量を適切に抑えようというインセンティブを持たせず、現状に甘んじているところを庇護するような制度設計が必要なのだろうか。なお、医療人にとっては、“大学病院本院並み”という評価はプライドをくすぐられる面もあり、「Ⅱ群が医療機関別係数全体を考えた際に有利とは限らない」といくら言われても、高い授業料を払ってでもⅡ群になりたいと思う病院経営層は多いはずだし、それを否定することはできない。
次回配信は12月12日5:00を予定しています。
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