【京都第二赤十字病院 医療情報室 山本順一】
近年の医療業界では、社会保障費の増大による医療計画の見直し、情報開示、医療のIT化などの諸策が急ピッチで進められ、医療機関を取り巻く経営環境は大変厳しく、変革期にあるといえる。
医療機関同士の競争も激化し、データに基づいた「Fact-based」での戦略的な経営が求められている。
今回、各医療機関の1床当たりの入院収入(年間)を試算し、経済的に生産性の高い施設と低い施設では、どのような点に違いがあるのか、医療圏での疾患群ごとのシェア傾向を軸に分析した。
まず、データの算出方法について説明する。
今回は、医療機関の経済性を可視化するため、当院におけるDPC入院収入データから、MDC6分類(手術あり・なし)単位で、疾患群ごとの標準収入を算出した。
この標準収入を、厚生労働省の公開データに掛け合わせ、施設ごとに推定の入院収入(年間)を算出し、さらに病床数で割り返して1床当たりの粗利益(収入から材料費および薬剤費を差し引いた利益)を推計し、経済的な生産性の指標とした=図1=。
ある程度の競争状況にある医療圏の施設を比較対象にしたかったため、施設の抽出条件として、ハーフィンダール指数※を用い、比較的競争環境にある55医療圏の310床以上の施設を対象とし、1床当たりの粗利益の額を軸に、医療機関群ごとに上位群と下位群に分け、比較分析を行った。
Ⅲ群施設は、施設規模および1床当たりの経済的生産性のばらつきが大きすぎるため、Ⅱ群の数値を適応して、同規模・同機能の施設抽出を行っている。
上記の条件で抽出したところ、今回の分析対象施設は117施設となった=図2=。
※企業の集中度を測る指標で、業界各社のシェア(市場占有率)を二乗した上で、すべての企業における総和を求めたもの
図2 分析比較対象施設の抽出条件(クリックで拡大)
まず、各医療機関でどの程度、経済的な生産性に差があるのか見ていただきたい。=グラフ1(a、b、c)※=は、図1の方法で算出した、全国のⅠ・Ⅱ・Ⅲ群施設の1床当たりの年間推定粗利益の額を施設別に並べている。例えばⅡ群施設(グラフ1-b)では、最も額の大きかった「済生会熊本病院」と、「最も額のちいさな医療機関」では、2.8倍近くの開きがあった。
※グラフ1(a、b、c)については、図2の抽出条件に当てはまらない全国の(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ群)施設についても対象としている
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