【株式会社メディチュア代表取締役 渡辺優】
■10月から義務化、看護必要度データの提出
今年4月の診療報酬改定から半年間が過ぎようとしている。3月31日時点で7対1入院基本料を算定する病院や10対1で看護必要度加算を算定している病棟については、9月末までは「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の基準を満たしているものと見なす経過措置が取られている。10月以降、看護必要度は新基準を満たす必要があり、看護必要度の評価対象患者については、患者ごとのデータであるHファイルを提出しなければならない。
Hファイルを提出するため、システム対応等のスケジュールが厳しく、多少混乱した病院もあったようだが、多くの病院では提出のめどが付いたのではないだろうか。
診療報酬における入院看護サービスは、入院基本料において7対1、10対1等の「人員配置基準」に重きを置いた評価となっている。それ以外に、正看護師の比率や平均在院日数などの項目もあるが、多くの病院では配置基準を満たすため、看護師の確保に最も苦労しているのが現状であろう。
入院基本料の評価は病院全体のものである。患者単位で見れば、入院初期の加算等を除いたベース部分の入院基本料は、提供された看護サービスの質や量に関係なく、全員同額である。そのため、患者側からの不公平感はもちろん、医療機関にとっても、診療科の違いなどにより、負担の大きい病院とそうでない病院の不公平感があることは否めない。このような問題に対し、看護必要度の評価は、正しく看護師の業務負担・サービスの提供状況を把握し、適切な評価・報酬につなげるための極めて重要な手段である。
一方、7対1入院基本料を算定する病院では、新基準の25%のクリアが病院経営における至上命題であるところも少なくないだけに、現状では看護必要度の適切な評価に対する意識がまだ十分でない病院もあるように感じる。
■看護必要度データ「Hファイル」の活用進む
各病院から患者別の看護必要度データが提出されると、次期報酬改定に向けて中央社会保険医療協議会などでは、データに基づく議論が活発化するだろう。マクロなものからミクロなものまでさまざまな議論が想定されるが、現時点で予想できるものを3つ挙げた。
(1)病床機能分化の促進に向けた適正な看護必要度基準の検討
(2)疾患別看護必要度データによる加算の検討
(3)看護必要度データの精度によるインセンティブ、ペナルティーの検討
次回配信は10月5日5:00を予定しています。
(残り2081字 / 全3140字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】