【株式会社メディチュア代表取締役 渡辺優】
■医師確保の課題はいつ解消されるのか
人口10万人当たりの医師数は、昭和30年(1955年)の約100人から、平成26年(2014年)の250人弱まで増えてきた=グラフ1=。病院と診療所のそれぞれの推移を見ると、病院の医師数は順調に増加する一方で、診療所はほぼ横ばいとなっている=グラフ2=。
厚生労働省「平成26年医療施設(静態・動態)調査」を基に作成
グラフ2 人口10万人当たりの病院医師数と診療所医師数の推移
厚生労働省「平成26年医療施設(静態・動態)調査」を基に作成
人口10万人当たりの医師数だけではなく、医師数そのものの推移を見ると=グラフ3=、病院の医師数は1970年代半ばくらいから急激に増えている。一方、診療所は緩やかな伸びになっている。
グラフ3 病院医師数と診療所医師数の推移
厚生労働省「平成26年医療施設(静態・動態)調査」を基に作成
さらに78年以降について、2年前の人口10万人当たり医師数との比較の推移を見た=グラフ4=。病院は2000年前後で若干、増加度合いが抑えられているものの、安定的に増加している。一方、診療所は1990年代後半から2000年前後にかけて、やや増加傾向であったものの、全期間を通じ、大きな増減は見られない。
グラフ4 人口10万人当たり医師数の増減(対2年前比較)
厚生労働省「平成26年医療施設(静態・動態)調査」を基に作成
このような病院における1970年代半ば以降の医師数増加の背景には、高齢化に伴う医療需要の増加に加え、医療技術の進展等に伴う医療需要の増加もあるだろう。しかし、着実に医師数が増えているにもかかわらず、全国の病院において医師確保が楽になったという話は皆無である。それどころか、医師臨床研修制度や新専門医制度などの制度的な見直しにより、医師確保の先行きが不透明になりつつある。
日本全体のマクロな医師需給については、厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会」の医師需給分科会で議論がなされているところである=グラフ5=。しかし、医師確保に悩んでいる病院にとっては、医師需給の均衡が取れる2024年や33年まで悠長に待つことは当然ながら不可能である。そこで、一向に医師確保が楽にならない環境において、病院での取り組みの余地について考える。
グラフ5 医師の需給推計結果
厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会」中間取りまとめ(案)補足資料から引用
次回配信は9月21日5:00を予定しています
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