【株式会社メディチュア代表取締役 渡辺優】
■日本全体で人口減少局面に突入
先日公表された2015年の国勢調査の抽出速報集計結果によると、大正9年(1920年)の調査開始以来、初めて日本の人口が減少した=グラフ1=。今後も日本の人口は減少し続けることが想定されている。
実績値:総務省平成22年国勢調査、平成27年国勢調査(人口速報集計)
推計値:国立社会保障・人口問題研究所日本の将来推計人口(平成24年1月推計出生中位(死亡中位)推計)を基に作成
しかしながら、都道府県別に見ると、埼玉、神奈川、愛知、千葉、福岡、沖縄、滋賀に東京も合わせた8都県では人口が増加している=グラフ2=。この要因の一つとして、他都道府県からの流入の多さが挙げられる。埼玉、神奈川、愛知は流入が多くなっているが、一方で沖縄は流入がさほど多くない。これは相対的に出生数が増えている影響だろう。
また、人口が減少している道府県では、宮城のように流入が多い県や、大阪、長崎、福島のように流出が多い府県もある。
グラフ2 都道府県別の人口増減(2010年から2015年までの変化)と他都道府県との人口流出入 (東京都は人口増加・流入とも非常に多いため表記していない)
総務省 平成22年国勢調査、平成27年国勢調査(人口速報集計、抽出速報集計)を基に作成
グラフ3 都道府県別の60歳未満と60歳以上の他都道府県との人口流出入 (2010年と2015年の比較)(東京都は人口増加・流入とも非常に多いため表記していない)
総務省 平成27年国勢調査(抽出速報集計)を基に作成
さらに人口流出入について、60歳未満と60歳以上に分けプロットした=グラフ3=。埼玉は60歳未満・60歳以上とも流入している一方で、神奈川は60歳以上が流出している。また茨城では60歳未満が流出、60歳以上が流入している。東京については=グラフ4=、60歳未満が大幅に流入している一方で、60歳以上は流出している。
15年12月に日本版CCRC構想有識者会議の最終報告(「生涯活躍のまち」構想)が取りまとめられた。その中で、「東京圏をはじめとする地域の高齢者が、希望に応じ地方や『まちなか』に移り住み、地域住民や多世代と交流しながら健康でアクティブな生活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるような地域づくりを目指すもの」と記されているが、現状において一部の高齢者は、退職などを機にUターン等の地方への移住をしているためと思われる。
グラフ 4 都道府県別の60歳未満と60歳以上の他都道府県との人口流出入 (2010年と2015年の比較)(グラフ3と同一内容で東京都を表記)
総務省 平成27年国勢調査(抽出速報集計)を基に作成
■医療需要の変化を把握し経営に生かす
日本全体で人口減少局面に突入することは、ある程度想定されていたが、15年国勢調査の結果で確実なものとなった。このような人口減少は医療需要の変化にも影響を与える。特に人口減少の著しい地域では、医療・介護の需要に既に減少傾向が見られる=グラフ5=。
グラフ5 A医療圏における人口・医療介護需要予測
国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(平成24年1月推計)等を参考に試算
このような地域では、自院の経営安定化のみならず、地域全体の医療・介護を維持する視点で、需要減少に応じた対応が必要となってくる。医療需要増加局面における病院経営の難易度に比べ、需要減少局面は別次元の難しさとなる。特に人材確保・育成戦略については、極めて難しい選択を迫られる可能性がある。
次回配信は7月20日5:00を予定しています
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