【株式会社MMオフィス代表取締役 工藤高、株式会社メディチュア代表取締役 渡辺優】
2016年度診療報酬改定では、7対1入院基本料における「重症度、医療・看護必要度」(以下、看護必要度)の項目・基準が見直された。手術や救急搬送、無菌室の患者が評価される一方で、ハードルが15%以上から25%以上(許可病床200床未満で病棟群を届け出ない場合は23%)に引き上げられたことにより、病院によっては厳しい改定となった。経過措置が切れる今年10月以降に7対1を維持できず、病院全体で10対1を算定するような場合には、入院収入の大幅な低下が想定される。そのため、是が非でも7対1にしがみ付きたい気持ちも理解できる。一部病床を特定入院料である地域包括ケア病棟や回復期リハビリテーション病棟に機能転換したり、ICUやHCUの病床数を見直したりすることは、7対1を維持するための対策として有力な候補となるだろう。
しかし、そもそも、そのような機能転換をせずとも看護必要度の基準をクリアできるに越したことはない。第1優先として経過措置期間中にできる限りの対策を講じ、それでも基準をクリアできなければ、第2優先として機能転換の2段構えを考えている病院もあるが、地域包括ケア病棟への転換には、要件であるリハビリ平均2単位以上が直近3カ月の実績、在宅復帰率7割以上が直近6カ月の実績が必要なため、時間的な余裕は少ない。
地域包括ケア病棟への機能転換やICUの届け出取り下げを行わずに、看護必要度の基準を満たす対策を考えてみよう。単純に考えれば対策は2つ。該当患者割合の分子となる重症な患者数を増やすか、もしくは病床回転率を上げて分母となる総延べ患者数を減らすかだ。分子を増やすといっても、決して医療機器を臨床上は必要ないのに看護必要度を満たすために装着するといったコンプライアンス違反の指南ではないので、誤解がないようにご留意いただきたい。
看護必要度データは本年10月からはHファイルとしてデータ提出をしなければならない。明らかに他院では低い診断群の看護必要度が自院だけ高ければ、場合によってはDPC分科会のヒアリングという“公開裁判”が待ち構えているかも分からない。
■看護必要度の高い患者の受け入れ強化の効果は限定的
A病院(7対1、300床台)は看護必要度の直近の数値が22.3%であり、25%の基準に満たない。病床利用率は75%程度であり、ベッドに余裕があるため、疾患別に看護必要度の高い患者を積極的に受け入れる場合のシミュレーションを行った。具体的には、看護必要度25%の基準に比べ、A病院の過去の実績が40%前後と十分に高い呼吸器系疾患でベッドを埋めていくと仮定した。
次回配信は6月8日5:00を予定しています
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