2016年度調剤報酬改定で評価された「かかりつけ薬剤師」はどこへ向かうのか-。海外の薬剤師事情や多職種連携などに詳しい東京理科大経営学部の坂巻弘之教授に、今回の改定から見えてくる薬局と薬剤師の今後について聞いた。【大戸豊】
例えば、薬の相互作用の防止に配慮した場合は加算が付いても、薬に関連して利用者が抱える健康や生活上の不安に薬剤師がどうかかわるかについて、さらに考えるべきと話す。
坂巻教授は近年、豪州の薬剤師にかかわる諸制度について調査している。
豪州の薬局では、高齢者などの利用者の生活パターンや自宅で抱えている問題、栄養上の課題なども把握しながら、薬剤師が薬に限らず、総合的に健康上のアドバイスを行うこともある。こうした業務にかかわる薬剤師は100時間を超える研修を受けた後、公的な資格認定を受ける必要があり、業務内容も日常の服薬指導とは異なる高度な専門的指導になる。
一方日本では、報酬から見れば薬局薬剤師に求められているのは、薬歴の確実な記載や相互作用のチェック、残薬の管理など、薬剤師としての基本業務であり、坂巻教授は歯がゆさを感じている。
坂巻教授は、薬剤師が利用者の病気や服用する薬について分析し、適切な指導を行うことと、そのために必要な高い知識を持ち合わせていることを評価すべきと話す。
かかりつけ薬剤師が評価されたことで心配な点もある。点数だけを目的にした薬局の対応に対し、利用者が「事前の説明に見合う指導とは言えない」などと感じれば、医薬分業に関して国民が抱いた不信感を繰り返すことになってしまうという。
■なぜ薬局ではなく、薬剤師が評価されたのか
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