【日本医業経営コンサルタント協会福井県支部 支部長 杉原博司】
今回のテーマは、「7対1や10対1の病院が地域包括ケア病棟を導入した場合、各病棟の運用にはどのような影響があるのか」です。実際に地域包括ケア病棟を動かしている病院の例も参考にしながら、見ていきましょう。
地域包括ケア病棟を導入すると、運用上の課題が幾つか生じてきます。運用しながら改善していけることもありますが、これからの導入を考える病院さんにしてみれば、なるべく事前に解決しておきたいところでしょう。スムーズな運用のためには、以下の課題に対する準備が大切です。
地域包括ケア病棟 運用の課題
1)複数診療科の混成病棟への対応
2)病棟間の業務の均衡化
3)転棟基準の設定と病床管理の徹底
複数ある既存病棟のうち1病棟を地域包括ケア病棟に転換すると、それぞれの病棟は、複数診療科に対応する混成病棟の色合いが濃くなります。 第2回「病棟転換に適した病院、適さない病院」 でも、看護部の反発として触れた通り、複数診療科の患者が混在する病棟はケアの管理が大変です。
また、地域包括ケア病棟の導入に伴う病棟再編で、患者の流れが変わるとともに、病棟の業務量も変化します=図=。
DPC病棟で受け入れる1日当たりの新規入院患者数が大きく変わらない中で、病棟数が減れば、1病棟当たりの新規入院患者数が増加します。平均在院日数を短縮して稼働率を上げなければなりません。そもそも、これが地域包括ケア病棟を導入する目的なのですが、DPC病棟の看護職員は「地域包括ケア病棟を導入したことで、業務量が急に増えた」と感じるでしょう。また、地域包括ケア病棟の方も、DPC病棟からの転棟に追われるという状況になります。300床以上の病院では相対的に影響は小さくなりますが、200床規模の病院となると変化が大きいと思われます。
■地域包括ケア病棟で増収も、「このままでは離職者が!」
ここで、実際に地域包括ケア病棟を導入した地方の中核病院のケースを見てみましょう。
V病院は、地域包括ケア病棟を導入したことによって収入が増加したものの、看護部から悲鳴に近い声が起こりました。
「このままでは、離職者が出る」
「各病棟管理者から、人員増強を求める声が止まらない」
…いったいV病院で何が起こったのでしょうか?
次回配信は3月15日5:00を予定しています
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