【大和市立病院薬剤科 計良貴之】
現在、2025年に向けた医療・介護体制の整備が進められている。キーワードは「病院完結型」から「地域完結型」への移行であろう。
従来の「病院完結型」では、患者は一つの病院で急性期から回復期、慢性期へと一通りの治療を受けていた。しかし、「地域完結型」の医療体制では、患者は病状や病期に応じて転院することになる。このような医療体制では、病院と病院、病院と介護施設、病院と在宅医などの連携が欠かせず、地域医療の体制を維持していく上でも鍵になるだろう。
病院薬剤師も、「地域完結型」の医療体制と無関係ではない。日々の業務では、急性期と回復期・慢性期、介護施設などとの間には「薬剤費」の壁があると感じる。急性期の診断群分類包括評価(DPC)対象病院では、疾患に基づいた包括評価に薬剤費が含まれるのに対し、回復期などでは薬剤費が入院基本料に包括される。つまり、急性期では疾患により薬剤費が制限されるが、回復期などでは疾患に係わらず薬剤費が制限される。そのため、急性期治療で使った高額な薬剤を回復期に転院した後も続ける患者の受け入れは、転院先の病院を経営的に厳しくさせる。そのため、患者の転院が敬遠されるのだ。
医療施設の連携を円滑にするには、お互いの間にある問題を調整し、一つずつ解決していかなければならない。
連載では、転院時における薬剤の変更についての当院の取り組みを紹介したい。
大和市立病院は、神奈川県央地域において、脳卒中ケアユニットを持つ地域中核病院である。当院は全病床が急性期病床で、急性期を脱した患者は、回復期や慢性期など、それぞれの病状に応じた機能を有する病院や施設に転院したり、在宅療養に移行したりすることになる。
この転院の際に患者の薬剤費が障害となることが少なくない。急性期病院では、患者の病気の治療が最重要事項であり、そのために薬価の高い薬や多剤併用療法を選択することも多い。しかし、療養型・回復期病院や介護施設でも、急性期で使っていた薬剤を継続して利用する場合、受け入れに難色を示されることがある。
これは、療養型・回復期病院や一部の介護施設では、薬剤費が入院基本料などに包括されていることが原因だが、薬剤費が転院調整の障害になっていることを理解している医療関係者は少ない。薬剤費のために転院が困難な場合、地域連携室の担当者が、その都度薬剤師や主治医に対応を依頼しているのが現状である。
今回は、当院の転院調整の実績と、転院調整で薬剤費が問題とされ、処方内容の変更を依頼された事例を紹介しつつ、薬剤師が担う役割について考察したい。
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次回配信は1月22日5:00を予定しています
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