【株式会社MMオフィス代表取締役 工藤高】
連載では、DPC病院における機能評価係数Ⅱの中で在院日数短縮の努力を評価した「効率性係数」について何度も取り上げてきた。それは高度急性期、急性期病床として存続するためには、最も重要な係数であると認識しているからだ。
今回は11月16日の診療報酬調査専門組織「DPC評価分科会」で公開された2014年度のDPC公開データを用いて、全国で症例数の多いメジャー5疾患(肺炎、誤嚥性肺炎、狭心症心カテ検査、狭心症PCI、心不全)の在院日数の平均値と効率性係数の関係を見て、効率性係数改善のポイントを検討してみたい。
本題に入る前に、新たな係数として導入される見通しの「重症度指数」(指数は相対評価をすると係数になる)について触れたい。これはDPC病院新規参入時に出来高時代の前年度収入保証である現在の「暫定調整係数」をなくしていく議論で、激変緩和措置として登場してきた。重症度の高い入院患者に対する評価として、「包括範囲出来高実績点数と診断群分類点数表との比を表現」するものだ。つまり、DPC包括部分の医療資源投入量(出来高点数)の多さを評価する。
点数の多寡が本当に重症度を表しているのか、それとも非効率な医療を提供しているのかを、明確にすることは困難であろう。しかし、医療の標準化が進み、また包括化されたDPC制度下において、極端に非効率的な医療を提供している病院はないと考えるのが自然ではないか。とは言っても、「重症度指数」が大きな影響力を持つようになれば、出来高払い制度との違いが不明確になってしまう危惧もある。DPCは医療の「効率化と標準化」と言いながら、そもそもかかった原価に基づいては設定されていない出来高診療報酬点数に、いつまでこだわるのかと思ってしまう。
理想は重症度を反映した評価マトリックスを用いるCCPマトリックスをすべての疾患において適用することだが、これもあまりに精緻にすると、複雑過ぎて事務作業量が多くなってしまう。これでは、包括医療のメリットである「事務作業の簡素化」とは真逆の方向になる。
CCPマトリックスは、次回診療報酬改定ではあくまでも一部疾患への導入に限定される予定である。「重症度指数」は暫定調整係数の代わりの一時的な指数と理解しているが、CCPマトリックスの展開次第では、「重症度指数をなくす上での激変緩和措置の議論」が始まり、いつまでも調整係数がゾンビのように、何かしら名前を変えて残るのではないだろうか。これは出来高診療報酬点数の呪縛と言えよう。
次回配信は2016年1月6日5:00を予定しています
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