厚生労働省は30日、中央社会保険医療協議会の総会に、来年4月にスタートする「患者申出療養」の制度の運用方法の案を示し、承認された。同案では、患者申出療養が混合診療を「無制限に解禁」するものではないと明記し、その対象となる保険適用外の治療法を、保険収載に結び付けるための手順などを示している。【佐藤貴彦】
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患者申出療養は、患者が受けたいと希望する保険適用外の医薬品や医療機器を使った治療と、保険が適用される医療との併用を、短期間で認める新たな制度。
医療保険が適用される手術や医薬品は、有効性と安全性が確認されたものに限られ、保険適用外の治療と併用する場合の費用は原則、本来は保険が適用される部分まですべて患者が負担する仕組みになっている。しかし、患者申出療養として併用が認められれば、患者が全額負担するのは保険適用外の治療の分に限られる =図= 。
現在、保険適用を目指す新たな治療法などは、「先進医療」として認められれば保険適用の治療法と併用できる。しかし、その審査に半年ほどかかる上、保険適用を目指すために対象とする患者の状態などの基準を設けてデータを集める必要があり、基準外の患者が先進医療として治療を受けられないといった指摘があった。
このため、政府は昨年6月、保険適用の治療法との併用を認める新たな制度として、患者申出療養の創設を決定。法改正などを進めた。併用を認めるまでの審査期間は、質の高い臨床研究を実施する病院として厚労相が承認した「臨床研究中核病院」が必要な意見書を作成することなどで、原則6週間まで短縮することとし、その運用方法については中医協で議論を重ねてきた。
ただ、患者申出療養に対し、患者団体からはさまざまな懸念も指摘されていた。中医協が9日に実施した患者団体からのヒアリングでは、出席した代表者が、保険適用外の治療を保険適用の医療と併用できる枠組みを広げることで、その治療法に保険が適用されるまでの期間が延び、結果として患者の負担が増えるといったことが起きないようにすべきなどと訴えた。
30日の総会に厚労省が示した案では、保険適用を目指さない治療法を患者申出療養の対象から外すことや、制度の創設が、混合診療を無制限に解禁するものではなく、国民皆保険の堅持を前提にしたものであることを強調。臨床研究中核病院が作成する意見書には原則、その安全性や有効性を確かめるための臨床研究の計画書を含めることとした。
一方で、例外的な対応として、その患者への治療を臨床研究の形式で実施することが難しい場合は、計画書は免除し、その治療法について患者が説明を受けて同意したことを示す書類などのみを提出させるとした。
そのほか、同省の案には、患者が意見書などを国に提出し、患者申出療養としての使用を求めた際に、その可否を審査する「患者申出療養評価会議」(仮称)を新たに設置することや、そこで6週間以内に審査結果を出せない場合に、その理由を明確にし、委員全員で集まって慎重に議論することなども盛り込まれた。
また、患者申出療養として実施して、健康被害が生じた場合の補償や治療の内容、費用の取り扱いなどは、事前に患者・家族に説明し、同意を得ておくこととした。実際に重篤な有害事象などが発生した場合は、その治療を患者申出療養として実施しているほかの医療機関などに情報提供することなども明示した。
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