患者の申し出から最短2週間ほどで、未承認の医薬品などを保険外併用療養費制度の中で活用できるようにする「患者申出療養」(仮称)の創設を、規制改革会議が提言した。政府はこれを受け、必要な法案を来年の通常国会に提出することを目指すと閣議決定。医療関係者や患者の間でも賛否が分かれるこの仕組みだが、同会議の岡素之議長(住友商事相談役)は、その創設により損をする人が見当たらないと主張する。【構成・佐藤貴彦】
「社会福祉法人の役割、ますます重く」- 規制改革会議・岡議長インタビュー(下)
■皆保険制度、環境変化に合わせベターに
わたしは規制改革会議の議長である前に、企業経営者として、環境が変化する中で現状のままでいるのは、進歩がない、成長がない、改善がないと考えている。ベターな改善でも実施して、今より良くしていく必要がある。そして、また改善できるタイミングがあればベターにする。これを続ければベストに近づく。患者申出療養も、国民皆保険制度を改善するための提案だ。
国民皆保険制度の理念は、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療で行われるべき」というものだ。医薬品を含めた医療技術は、どんどん進歩する。それに伴って患者のニーズも変化し、「必要かつ適切な医療」の中身も変化する。しかし、直ちにすべてを保険診療として取り入れるのは、制度上難しい。結果として、「必要かつ適切」であるにもかかわらず、保険収載されるまでの期間、患者のニーズをカバーできない部分が、どうしても出てきてしまう。
直ちにカバーできない部分があると認識した国は2006年、保険導入のために評価する治療を「評価療養」とするなど、保険診療と併用可能にする保険外併用療養費制度をつくった。それは、国民皆保険制度をベターにするための、その時点での取り組みだったと理解している。
しかし、それから10年近く経った。患者のニーズに必ずしも応えられていない部分は、まだ残っている。そこで、保険外併用療養費制度をさらに改善し、ベストに近づけるために、患者申出療養の創設を提言した。
提言のポイントの一つは、患者起点だということ。もう一つは、保険外併用療養費制度の活用が短期間で認められることだ。現在の評価療養では、医療機関の申請から承認までに半年程度を要している。しかし、治療が必要な患者にとって、半年は非常に長い。患者申出療養では、最長でも申請から6週間ほどで承認される制度設計を求めている。
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