【株式会社MMオフィス代表取締役 工藤高】
前回の連載において、地域医療構想は計画経済的に「患者が減る、もしくは増えることをあらかじめ教えてくれているのであって、各病院がどのように対処すべきか考える時間を与えてくれている」とポジティブなとらえ方をした。
実際の入院患者減という現実と地域の医療需要を踏まえた上で、自院の病床削減を「戦略的ダウンサイジング」としてとらえて中長期計画を立てるのであれば、そのための豊富なデータを国が提供してくれている。これは勝手に新規参入ができない基準病床数という総量規制がある「計画経済」ではなく、弱肉強食の「資本主義経済」である一般企業から見ると、まさしく「上げ膳据え膳」に近い配慮かも分からない。
もし、このようなデータを自前ですべて用意しようとしたならば、相当な手間がかかるだろう。コンサル会社に委託したらフィーもかかる。病床機能報告制度の詳細な項目が都道府県ホームページ上で公表されたら、ライバル病院のデータも全部可視化することが可能だ。つまり、このような貴重なデータを国が提供してくれることを格好のチャンスとして、自院の新たな取り組みを考えるべきと言えよう。ネガティブに文句を言っているだけでは何も変わることはできない。
地域医療構想では、ともかく過剰病床数だけが過度にフォーカスされているように思うが、病床機能ごとの医療需要の予測や、必要医師数、看護師数も議論される想定になっている。2025年、40年に向け、15歳以上65歳未満の生産年齢人口が減少していく。また、この減少度合いは地域により差異が大きい。このような人口構造の変化と医療・介護需要の変化が見込まれる中で、医師・看護師等の医療スタッフ、介護スタッフの確保は、相当厳しい環境に突入することが想定される。
次回配信は10月14日5:00を予定しています
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