【株式会社MMオフィス代表取締役 工藤高】
今年3月31日に地域医療構想策定のガイドラインが示された。昨年11月14日までに病床機能報告制度の病床機能4区分(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)ごとの届け出が自己申告制で行われたが、その実際の区分ごとに病床数を決定するために、今年4月から各都道府県による「地域医療構想」の策定が始まった。ご承知のように、地域医療構想は2025年に向けて病床の機能分化・連携を進めるために病床機能4区分ごとに25年の医療需要と病床の必要量を推計して定めるものである。その策定は18年3月までだが、厚生労働省は16年半ばまでが望ましいとしている。
高度急性期、急性期、回復期については、入院基本料相当部分と一部のリハビリ点数を差し引いた1日当たりの医療資源投入量が示された。一方、慢性期の医療需要は点数区分ではなく、医療区分1の入院患者の70%は在宅医療への移行を見込んでいる。つまり、最初から医療区分1の療養入院患者7割減ありきが前提になっているわけだ。その計算の根拠は地域医療構想策定ガイドラインの検討会で示された療養病床の受療率の地域差である=グラフ1=。大阪より東で高いのは北海道、北陸地方くらいで、明確に西高東低となっている。
西日本は東日本と比較して一般病床、療養病床とも病床数が多く、その結果として平均在院日数が長く、患者1人当たり入院費が高くなっている。つまり、「ベッドの供給が入院患者という需要をつくり出す」という経済原理が作用していると思われる。その是正のためにガイドラインで、慢性期は一律に療養病床の入院受療率について、最小の県である長野県を目指すのだが、いかに地域ごとで議論するとはいえ、受け皿を整備しないと一歩間違えれば地域医療の崩壊もあり得るかもしれない。地域医療構想では、地域ごとの医療・介護提供体制に十分な配慮が必要であることを療養病床における患者構成データから考えてみたい。
グラフ1 療養病床の都道府県別入院受療率
厚生労働省 第9回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会(2015年3月18日)資料より引用
■レセプトデータから患者の状態を推測するのは難しい
=図=には入院受療率の地域差の解消目標の考え方が示されている。両パターンの範囲内で目標を定める意味は、入院受療率が高い地域は低下を目指し、低い地域はそのままを維持することとなる。一方、入院受療率の低い地域で慢性期療養環境を充実させるような地域差解消方法はガイドラインに書かれていない。地域差解消は入院受療率を削減することだけを目的にする険しい道である。
図 療養病床の入院受療率の地域差解消の考え方
厚生労働省 第9回地域医療構想策定ガイドライン等に関する検討会(2015年3月18日)資料より引用
次回配信は5月13日5:00を予定しています。
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