【株式会社川原経営総合センター 病院コンサルティング部 生田宗嗣】
組織の大半が専門職で構成される医療法人では、経営よりも現場の意向を優先しがちな傾向にあります。ただ、基盤となる経営体制が安定しなければ、質の高い医療サービスを継続的に提供することはできません。経営と現場とは二人三脚。卵が先でもニワトリが先でも良い組織にはなれません。この連載で事例に挙げた3つの法人は、何を考え、どんな要因があって先駆的な経営改革を成功させたのか-。共通するキーワードを分析します。
医療法人の場合、経営の中心に“病院事業”を据えることが一般的です。病院は法人の中心であり、病院と法人はイコールの関係。一方で、病院以外の事業(例えば在宅介護サービス等)は病院の付属事業と考えられてしまいます。確かに売上高や職員配置で見れば、病院事業が一番でしょう。ただし、この視点が通用するのは“今までは”であって、“これからも”ではない点に注意する必要があります。
厚生労働省は病床を削減し、在宅医療を拡大する施策を進めています。どの病院だって、将来は病床を削減しなければならない可能性があります。ならば先の明るい在宅事業を拡大して、その担保とすべきだ-。連載の 第2回、第3回、第4回 で挙げた3法人はこう考えて、病院事業中心の法人経営から、病院と在宅の二事業部体制に移行しました。将来を見据え、先手を打って事業体制の組み替えを実行したのです。“医療法人の中心は病院事業”という既存の常識にとらわれない、この柔軟性が経営改革の源泉と言えます。
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