【千葉大学医学部高齢社会医療政策研究部准教授 井出博生】
連載の最終回は、今後の病院のロジスティクスに関して注目すべき点について考えてみたい。今回の視点は、(1)災害への備え(2)多様化する物品(3)在宅医療―の3点である。
東日本大震災から3年が経過した。震災は病院のロジスティクスにも、いくつか教訓を与えてくれた。第一に、被災地(被災病院)内での在庫量である。特にロジスティクスが途絶えた場合に備えて、震災発生から3日間の在庫量と必要品目のストックが注目され、これまでの在庫はぎりぎりまで削減すべきという考え方が見直される契機となった。これはサプライチェーンが途切れたことで生産に多大な影響を受けた、製造業でも同じである。
第二に情報の重要性である。目の前に薬があったとしても、カルテが失われたり、参照できなくなって、どの薬を服用しているのか分からない被災者に、処方することはできない。お薬手帳などの患者側の自己管理を含め、処方情報をどのようにバックアップすべきかが検討されている。
第三に支援物資の送り方である。例えばシートから切り離されたばらばらの薬剤が届けられれば、被災地では仕訳などの不要な仕事が増えてしまったり、あるいは配送できない。また、医薬品の名称は紛らわしく、扱った経験のない物流関係者では取り扱いが難しいという問題もある。東日本大震災では、薬剤師が医療支援チームに加わり、仕分けでも活躍したことからも分かるように、専門性が求められるのだ。
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