2012年度までに後発品の数量シェアを30%以上とする政府目標達成に向け、相次いで打ち出された使用促進策の追い風に乗り、10年は後発品の数量シェアがかなり伸びた。4月から新たに実施された使用促進策の効果と共に、後発品を手掛けているメーカー各社の動きを振り返る。
■薬局に大きなインセンティブ
4月の診療報酬改定で後発品の使用促進策が強化された。「入院・外来を問わず全体として使用を進める」との観点から、そのメニューは多彩なものとなったが、最大の目玉は、外来にかかわる「薬局の調剤基本料における後発医薬品調剤体制加算の見直し」だ。
これは同加算の算定要件を処方せんベースから数量ベースに変更するとともに、加算点数を処方せん受け付け1回につき従来の4点から最高で17点に大幅に引き上げる内容。これにより薬局は、直近3か月の医薬品の調剤数量に占める後発品の割合が30%以上で17点、25%以上で13点、20%以上で6点を算定できるようになった。
この見直しは、薬局が後発品を使用する大きなインセンティブとなった。大手チェーン薬局などが加盟する日本保険薬局協会が、会員約6500施設を対象に、10月から11月にかけて実施したアンケート調査結果(有効回答は2071施設)によると、17点を算定している薬局は26.8%となり、6月末の前回調査から4.5ポイント増加。13点は4.5ポイント増の15.5%、6点は0.8ポイント減の19.5%だった。一方、算定していない薬局は8.1ポイント減の38.3%と減っており、薬局がより高い点数を目指していることが読み取れる。
■6―8月は頭打ち傾向
しかし、薬局における後発品調剤率が一本調子に伸びているかとなると話は別だ。中央社会保険医療協議会(中医協)の診療報酬改定結果検証部会は12月8日の中医協総会に、「後発品の使用状況調査の結果概要(速報)」を報告した。調査は、4月の診療報酬改定を受け、薬局における後発品の調剤状況がどう変化したかなどを把握することを目的に、9月から10月にかけて1500施設を対象に実施した。
それによると、後発品の調剤率(有効回答は682施設)は、数量ベース(平均値)で1月19.6%→2月20.2%→3月21.0%→4月22.3%→5月22.7%→6月23.0%→7月22.8%→8月22.8%と推移。6―8月には頭打ちの傾向が見られ、9月以降の推移が注目される。
併せて実施した病院1500施設、診療所2000施設を対象にした調査では、今後の後発品の備蓄品目数について聞いたところ、病院(有効回答は574施設)では「増やす予定」が67.4%、「現状維持の予定」が30.0%だった。一方、診療所(有効回答は662施設)では「現状維持の予定」が62.5%、「増やす予定」が20.7%となった。病院、診療所共に「減らす予定」は少数派で、それぞれ0.5%、1.5%にとどまった。
■メーカーは大幅増収
新たな使用促進策の実施により、メーカーの後発品事業の売上高は大幅な伸びを示した。各社の4-9月期決算を見ると、専業メーカー大手の連結売上高は、沢井製薬306億円(前年同期比27.6%増)、大洋薬品工業250億円(10.4%増)、東和薬品219億円(14.7%増)と2ケタ成長となった。
また、新薬を主体とするメーカーの後発品事業の売上高は、明治製菓87億円(24.3%増)、エルメッドエーザイ(親会社はエーザイ)57億円(62.2%増)、田辺製薬販売(田辺三菱製薬)54億円(53.8%増)、キョーリンリメディオ(キョーリン製薬ホールディングス)41億円(14.8%増)、科研製薬37億円(12.8%増)などとなり、専業メーカーと比べて、エーザイや田辺三菱製薬といった新薬大手の子会社の伸びが目立つ。
実際、処方権を持つ医師の「企業ブランド」志向は根強いようだ。コンサルティング会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパンが全国の病院、診療所の医師を対象に6月に実施したインターネット調査結果(有効回答は1757人)によると、後発品市場で期待する企業(6つの選択肢から1つを選択)は「新薬大手」が40.5%で最も多く、「国内後発品専業」の21.5%を大きく上回った。以下は「新薬中堅」11.3%、「異業種からの参入」4.0%、「外資後発品専業」1.0%の順で、「その他」は21.7%となっている。
■合従連衡が活発化
絶大な「企業ブランド」力を誇るのは国内の新薬大手ばかりではない。10年には仏サノフィ・アベンティスや英グラクソ・スミスクライン(GSK)など外資系の新薬大手が、後発品市場への本格参入を目指し、国内専業メーカーとの提携を活発化させた。これにより専業メーカー側には、ブランド力と、多額のコストが掛かるバイオ後続品(バイオ医薬品の後発品)の開発にチャレンジする体力を獲得するなどのメリットがあった。
現在、国内の医療用医薬品市場では、売り上げ規模の大きい新薬の主役が低分子化合物から、がんや関節リウマチ治療用の抗体医薬などバイオ医薬品に移りつつあり、14-15年ごろからその特許が続々と切れるといわれている。
バイオ後続品事業を優位に展開することを目指した提携の具体例としては、専業メーカー大手の日医工が6月にサノフィと共同出資会社「日医工サノフィ・アベンティス」を設立したのに続き、10月には韓国のバイオベンチャーと資本・業務提携を結んだことや、国産初のバイオ後続品(先発品は協和発酵キリンのエリスロポエチン製剤エスポー)を製造・販売する日本ケミカルリサーチ(JCR)の筆頭株主にGSKが躍り出たことなどが挙げられる。
一方、沢井製薬は、国内新薬中堅のキョーリン製薬ホールディングスに経営統合を持ち掛けた提案書の中で、バイオ後続品の開発に触れ、グローバルなアライアンスを視野に入れながら両社経営資源を適正に投下し、さまざまな提携戦略を中心にその方向性を検討したいとした。今後、国内専業メーカーを軸にした合従連衡がさらに激化することが予想される。
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