【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2024年度診療報酬改定は、高齢者救急の受け手として新たに評価された地域包括医療病棟が目玉であり、その届け出状況は気になるところだ。14年度診療報酬改定で新設された地域包括ケア病棟は、当初は制限が緩く使い勝手がとてもよいことから、14年7月1日時点で305病院が届け出ていた。
しかしながら、地域包括医療病棟は、ほかの急性期病院が救急患者連携搬送料を算定した「下り搬送」か、救急車の搬送の患者を全体の15%以上にする必要があり、院内転棟は5%未満と厳しく制限される。一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)の要件は、高齢な救急患者だけを入棟させるのではクリアが厳しく、さらに在宅復帰率にも80%以上という制約がある。
術後の患者を入れれば、入院後にADLが低下した患者の割合を5%未満に維持することが難しくなる可能性もあり、5月31日付の疑義解釈で、当面の間は要件が緩和されたとはいえ、容易に手が届く病棟ではなさそうだ。
さらに、入院料の包括範囲はDPC/PDPSと同様に設定された。救急医療管理加算やリハビリテーションなどが出来高算定できるが、10対1の看護配置に加えセラピストや管理栄養士など多職種の配置が課された割には、魅力が乏しいという声も耳にする。
本稿では、地方厚生局のウェブサイトで開示されている6月1日(東北・関東信越厚生局)現在か7月1日現在(北海道・東海北陸・近畿・中国・四国・九州厚生局)の届け出状況から、地域包括医療病棟を先行して届け出た病院の病床機能を明らかにし、今後の方向性について私見を交えて論じる。
なお、本稿における病床規模や届け出状況は、地方厚生局のウェブサイトと22年度のDPCの「退院患者調査」の結果、22年度病床機能報告を基に判断している。
グラフ1は
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次回配信は8月26日を予定しています
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