【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
介護労働安定センターが7月10日に公表した「介護労働実態調査」によると、2023年度の介護支援専門員(ケアマネジャー)の平均年齢は53.6歳。この年齢は、介護職員やホームヘルパー・生活相談員といった主な職種の中で最も高い。
しかも23年度のケアマネジャーの年齢構成は、年金を受給する65歳以上で13.6%を占め、60歳以上で見ると29.4%に上る。一方で、将来を担う40歳未満のケアマネジャーは7.6%で、前年度から0.1ポイント低下している。全体のおよそ3割を占める60歳以上のケアマネジャーの多くは、今後10年以内に引退の時期を迎えるだろう。これではどんどん現役として働く介護支援専門員が減少して、担当ケアマネが見つからない介護難民を生んでしまう。
このようなケアマネジャーの高齢化の理由はいくつかある。中でも大学で4年間、社会福祉を勉強し、社会福祉士という国家資格を得た人でも、その後5年間の実務を経ないとケアマネジャーの国家試験を受けられないというバリアが大きい。社会福祉士の資格が必要である専門職を5年も務めれば、それは大きなキャリアであり、その場所でそれなりの責任や地位を得ているはずだ。そのような人が、改めてケアマネジャーの国家資格を得て、新たな仕事にチャレンジする気になるのか。その可能性は低くて当然だろうという結論になる。だからこそこの実務経験要件を見直す必要がある。それも思い切った見直しが必要だ。
こうした議論をすると、「5年は長すぎるが、実務経験なしで受験資格を得られるのはあまりにも乱暴だ」として、2、3年の実務経験を求める意見が散見されるが、それでは中途半端だ。実務が5年から3年もしくは2年になったからといって、新たな仕事にかわろうという動機は生まれにくいだろう。そもそも大学を卒業したばかりの若者が、堂々と社会福祉士としてさまざまな分野で活躍している事実を見れば、実務経験が社会福祉援助の専門家に必ずしも必要ではないことは証明されていると言える。
社会福祉士というのは、ケアマネジャーより幅広い分野の国家試験を受けて合格したソーシャルワークの専門職だ。ケアマネジメントはソーシャルワークの一部にしか過ぎない。つまり社会福祉士は、ケアマネジャーの上位資格なのである。その上位資格者が経験なしで専門職として働いているのに、「ケアマネジャーにそれはまかりならん」という論理・論法の方がおかしい。実務経験が仕事をしてくれるわけではないのだから、発想を根本から変えて、実務経験なしでケアマネジャーとして活躍できる新たな道筋をつくるという考え方をしてもらいたい。
同時に、ケアマネジャーになりたいという動機づけを高めるための待遇改善は不可欠だ。だが統合・一本化された介護職員等処遇改善加算の従業員への配分は、加算算定事業所の裁量で決定できるが、加算算定事業所以外の職員への配分は認められておらず、、居宅介護支援事業所の居宅ケアマネは、その配分を受けることはできない。
そのため、24年度の報酬改定では逓減制緩和が行われ、
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