【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
少子化に歯止めがかからない日本では、労働力が現在より減り続けることが確実であり、全産業で人材不足が深刻化する。介護事業の人材不足も解消のめどがなく、介護人材を増やそうとする対策どころか、現在より減らさないようにする対策も不可能となり、「人材は減り、不足する」ということを前提にした対策が必要になっている。
そのため、2024年度介護報酬改定の基本視点の1つの「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」の中で、「生産性向上による職場環境の改善に向けた先進的な取組推進」が掲げられている。それは介護人材対策が新しいステージに入ったことを意味しており、必要とされる介護人材の確保を目指すのではなく、人材が今よりさらに不足することを前提として、より少ない人材で現在より増大する介護ニーズに対応しようとするものである。そのことは、「生産性向上推進体制加算」の新設などでより具体的な対策がとられている。
そこで必要とされるのが介護DX(デジタルトランスフォーメーション)=IT技術を人・組織・社会に生かす変革である。ただ、勘違いしてはならないのは、DXの主役はテクノロジーではなく人間であるということだ。つまり、介護DXとは介護職員らが中心になってITテクノロジーを使いこなし、それにより生じた効果を十分に生かせるように、介護ビジネスモデルや組織体制、働き方を良い方向に変えていこうとするものである。
その目的は、「介護事業における生産性の向上」であることは前述したとおりである。当然のことながら生産性の向上とは、効率よく結果を出すことであり、介護に生産性向上を求めるということは、ひとり一人の介護職員が効率よく介護の結果を出す=今より少ない人数と時間で要介護者のケアを完結するという意味に他ならない。
見守りセンサーやAI搭載ロボットを活用して介護業務の効率化を図り、今より少ない人員配置で、できる限り時間をかけずにケアを完結しようとしているのだ。すでにその具体策として、見守りセンサーやインカムなどを一定台数以上設置した介護保険施設や居住系施設において、夜勤職員の配置人数を緩和する対策がとられているが、今年度からは配置人数の緩和を日中にかけて全日に及ばせていこうという取り組みが進められる。だが、生産性向上による配置基準の緩和というと聞こえはよいが、要するに一定時間帯の中で働く介護職員の人数を減らさなければ業務が回っていかないという意味だ。
しかし、この具体策には大きな矛盾が含まれている。生産性を高めた結果、従前より少ない人数で同じ仕事を完結させようとすれば、
(残り1257字 / 全2363字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】
【関連キーワード】