【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■高まる病院薬剤師の不足感
病院薬剤師が足りない。薬剤師を十分確保できている病院は相当少ないと思われる。幾つかのデータから実情を考えたい。まず、一般病床を有する病院を対象に、病棟薬剤業務実施加算1の届け出割合を都道府県別に比較した=グラフ1=。全国平均の35%に対し、滋賀や兵庫は50%を超え、高知と宮崎は15%を下回る。この加算は、急性期病棟の届け出が多く、病床規模が大きいほど届け出が多くなるため単純に比較することはできないが、地域により大きな差が生じていることは間違いないと考えている。
厚生労働省の検討会などで示された病院薬剤師の偏在指標からも、地域差を見ることができる=グラフ2=。この偏在指標は、入院・外来患者数や病院数などから推計される業務量に対し、地域の病院薬剤師の合計労働時間を性別や年齢階級などで調整し、比率を見たものである。業務量と労働時間が等しくなれば1.00となる(病院薬剤師が地域に過不足なく従事している状態)。1.00を下回れば病院薬剤師は不足し、1.00を上回れば病院薬剤師は十分となる。
残念ながら、全国平均が0.80と大幅な不足を表している。充足状態に最も近い京都や徳島でさえ1.00を割り込んでいる。青森や秋田に至っては0.5台後半と、業務量の半分強の薬剤師しか従事していない。
近年、高額な化学療法の薬剤などの影響で、急性期病院では薬剤費の比率が高まっている。それに加え、高齢化の進展により、基礎疾患を多く抱える患者が入院・外来の双方で増えている。このような変化に対応するため、抗がん剤などの最新かつ高度な知識と、ポリファーマシーなどへの対応に求められる幅広い知識・経験を有する薬剤師の活躍の場が増えている。さらに、医師の働き方改革に伴うタスク・シフティングが薬剤師の必要性を高めている。
そのような環境変化への解決策の1つが薬剤師の病棟配置である。薬剤師が病棟に常駐し、高い専門性を発揮することで医療の充実につながる。また診療報酬で評価されるため、経営にも貢献する。しかしながら、グラフ1に示した通り、病棟薬剤業務実施加算の届け出が厳しい地域では医療の充実を図れず、経営的にも厳しいことが想定される。
各病院では薬剤師を確保したいと思っていても、病院薬剤師は全国的に不足しており、今後も不足感が解消されるとは考えにくい。
■偏在指標だけでは見えてこない苦しい地域事情
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次回配信は7月3日を予定しています
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