30代前半に静岡で在宅クリニックを開業し、今では3つの分院を開設している。“在宅診療は生活をみること”、あるいは“在宅診療は「動く総合病院」であるべき”という独自のコンセプトを掲げ、在宅医療の次世代を担う若きリーダーとして注目される医療法人社団貞栄会の内田貞輔理事長。連載第4回は、介護と医療が信頼関係を築くまでの道のりと、信頼獲得に欠かせない医療者側からの働きかけの重要性についてお伝えします。
【医療法人社団貞栄会 理事長 内田貞輔】
■“生活の場”に医療を持ち込むことの難しさ
通常、介護施設を運営している法人と、在宅診療に取り組んでいる医療機関の規模を比較すると、施設側の方がはるかに大きいというのが実情です。そのため、医療機関との連携に施設の経営層の関心が高いと連携はスムーズにスタートし、逆にあまり関心がないようだと開始までに時間を要することがあります。
また、施設責任者が医療との連携強化を望んでいたとしても、より上位の方々が優先事項ではないと判断した場合は、やはり強化はできません。介護士やヘルパーといった現場スタッフにしてみても、上司の指示に従うのは当然で、医療者が現場スタッフに働きかければ進められるというものではないのです。
ただ、関わるからには施設入居者が少しでも健康寿命を延ばせるように、あるいは病気が重症化しないように、工夫するというのが在宅診療の本来の役割です。そのため、経営層にもその効果を感じてもらえるような状況になればと、まずは施設長や現場スタッフとの信頼を深めようと苦心するわけですが、信頼を得るまでにはとても時間がかかり、一筋縄ではいかないというのが率直な思いです。
■医療の勉強会は相互理解を促す大切な機会
私は常々、チームという考え方を大切にしています。第1回でも述べたように、チームには医療関係者のみならず、福祉関係者や施設の方々も含まれています。すべての専門職の方々をチームの一員と捉え、そうした方々の協力なしには真の在宅診療は実現しないと考えているからです。
そもそも介護と医療には立場の違いがあるわけですから、一堂に会せば最初からチーム感情が生まれるというものでもなく、かなりの時間をかけて直接顔を合わせる機会を増やすことで、ようやく仲間意識が芽生えてきます。また、両者の関係構築の一番の鍵となるのはやはりコミュニケーションで、たとえ施設側の反応が最初は芳しくなかったとしても、医療者側からの積極的な働きかけにより、コミュニケーションの機会を増やす努力が必要です。
チームとしての意識を共有し信頼関係を構築するには、
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