【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■機能評価係数II向上は取り組みやすい経営改善のポイント
近年、急性期病院は、診療報酬改定のたびに、「重症度、医療・看護必要度」の厳格化などによりベッドコントロールの難易度が上がり、稼働を維持するために新規入院患者確保に努めている。以前から急性期病院の収益性は決して良くないと言われているが、このような環境変化により、ますます厳しい経営環境となっている印象を受ける。
その急性期病院の多くが参加しているDPC/PDPS制度において、医療機関別係数は病院経営に大きな影響を与える要素である。その中でも機能評価係数IIは、医療機関の努力などを評価するインセンティブの色合いが濃いため、毎年具体的な目標を掲げ、さまざまな取り組みを行っている病院が少なくない。しかし、機能評価係数IIは、項目により努力余地のある係数と、そうでない係数があることは従前より述べている通りである。
具体的には、ケースミックスで決まる複雑性係数は劇的に向上させることは難しい。また、カバー率係数はDPC算定病床数に大きく左右されるため、中小病院が大病院を上回ることは極めて困難である。地域医療係数の定量評価係数は、地域シェアを評価する項目であるものの、DPC算定病床数と二次医療圏・三次医療圏のサイズでほぼ決定する値であり、努力余地はほぼないに等しい。
一方、効率性係数は在院日数の短さ、効率的な医療提供を評価するものであり、努力余地のある項目と言えよう。なお、2024年度診療報酬改定から機能評価係数IIの枠組みから外れた救急補正係数は、適切な請求による向上余地はあるものの、救急医療入院患者の割合とその患者の入院初日・二日目の医療資源投入量によって決まる値である。
毎年1回、DPC/PDPS制度の全参加病院の係数として公表される機能評価係数IIでは、自院の立ち位置が明確に分かる。そのため、機能評価係数IIの各項目について、努力余地のある項目か否か、どのような取り組みにより係数が向上するかなどの特性を理解した上で、自院の立ち位置を踏まえ目標を設定し、具体的な取り組みを考え、次年度にまた取り組みをアップデートするというPDCAサイクルを回しやすい。機能評価係数IIの向上は非常に取り組みやすい経営改善のポイントと言えるだろう。
■24年度改定で計算式の変わる効率性係数を理解する
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次回配信は5月22日5:00を予定しています
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