30代前半に静岡で在宅クリニックを開業し、今では3つの分院を開設している。“在宅診療は生活をみること”、あるいは“在宅診療は「動く総合病院」であるべき”という独自のコンセプトを掲げ、在宅医療の次世代を担う若きリーダーとして注目される医療法人社団貞栄会の内田貞輔理事長。連載第3回は、医療と介護の間で認識ギャップを埋めることの重要性と、協業が叶える可能性にについてお伝えします。
【医療法人社団貞栄会 理事長 内田貞輔】
■背景が異なる両者間で欠かせない認識調整
そもそも、医療と介護は患者さんや利用者さんの利益に貢献するという点では共通していますが、応えるために必要な知識・技能など、その背景は異なります。そんな両者がほぼ初対面からスタートするわけですから、軌道に乗るまでに一定の時間がかかるのは当然です。そのため、早い段階で互いの考え方を擦り合わせる機会を設けることが重要となります。
私はこの最初の過程を大切にしています。提携するにあたり、施設経営に携わる方と早めに会って情報を交換し、看護師が常駐している施設では施設看護師にも同席してもらいます。互いの基本的な考え方を確認するとともに、介護施設における私たちの過去の事例も紹介して、今後の連携の在り方や対処方法を確認していきます。提携先を変更した場合は理由を聞き、認識のギャップをできるだけ早い段階から埋めるようにしているのです。
しかし、直ぐに両者の間に信頼が生まれるかというと、そう簡単なものでもありません。互いの考え方を理解するだけでも2- 3カ月はかかり、施設側から率直な意見が出てくるようになるには医療側の相当な努力が必要だと感じています。定期的に対応への考え方を確かめることを繰り返すことで、ようやく率直な意見が少しずつ出てくるようになるのです。
こうした時間と努力を重ねることで、トラブル時や夜間コールへの対応、あるいは施設からの要望への対処などが理想に近づき、その積み重ねによってようやく信頼感情が芽生えてきます。それでも現場では予想外な出来事などによって考え方にギャップが生じることもあるわけですが、そういう時こそ、信頼関係を一気に飛躍させることができる好機だと思っています。
■施設側が医療の必要性を実感した時が好機
介護施設には、“生活の場だから医療は避けたい”という考え方のところもあります。こちらから良かれと思って提案しても、施設側と認識のギャップを感じることも珍しくありません。施設のスタッフにしてみれば、
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次回配信は4月下旬を予定しています
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