2024年4月より、いよいよ医師の働き方改革が実施されます。現在、医師の労働時間が大きな問題となっていますが、この改革の究極の到達点は、働いた医師と十分に働かなかった医師との差を明確にすることではないかと思います。そのような観点から考えると病院において医師、看護師、医療技術職、事務職などの明確な基準に基づいた、適切な人事評価制度の導入が必要となってきます。日本経営の第3回病院賃金調査(23年)によれば、病院職員に対する人事評価制度の導入状況に関して、看護師では79.1%。医療技術職では78.9%、事務職では78.3%と70%台の水準にありますが、医師は21.7%と極めて低率であります=グラフ1=。
今や病院も一般企業と同じような考え方が必要となってきています。現在の医療現場において、医師の人事評価制度の導入が必要な理由について考えてみましょう。
■理由その1 休みも取らず働くことが美徳か?
昔のように「病院は特殊な職場である」という考え方は今では通用しません。特に医師の場合、365日十分な休みも取れず、家庭を犠牲にまでして患者のため、病院のために働くことが果たして美徳なのでしょうか? 大きな問題になってきています。
■理由その2 医師の働き方に対する正しい評価は?
ただ単に大学卒業して医師免許取得からの年数だけで、給与が決定されることに納得しない医師が増加しています。医師は各種学会で認定されている専門医・指導医資格の取得や専門分野の学会での発表数、著名な医学雑誌への投稿論文数、自分が担当した手術件数、合併症発生率、検査件数、受け持ち入院患者数、外来患者数など、各医師の業績や行動に対する病院側からの正しい適切な評価を希望しています。
頑張った医師と頑張らなかった医師とで差がつくのは当然、頑張った年と頑張れなかった年で給与に差がつくのは当然、という考え方が主流になってきています。「平等ほど、不平等である」と思います。そうでないと優秀な医師は条件の良い病院に転職するか、開業してしまい、医師不足にもつながります。特に公立病院では大きな問題になってきています。
■理由その3 人間性の評価は?
医療技術の評価だけでなく、患者・家族、地域の医師会、病院職員とのコミュニケーションや人間関係の評価も考慮されるべき時代となっています。パワハラも大きな問題となってきています。
■理由その4 病院経営に対する考え方が適切か?
医療技術、人間性に加えて、病院経営に対して無頓着な医師では、良質の医療が提供できません。病院は利益を追求する組織ではありませんが、「少しでも経営状態を良好にしていきたい」という考え方が必要です。経営改善を達成したとしても、過去の赤字解消のためだけに財源を使用していたのでは果たして、現在の職員のモチベーションが向上し、今後も維持していけるでしょうか?
赤字解消は現在の医師を中心とした職員の努力のたまものであり、これら病院職員の貢献度に対し、病院側が何らかの反応を示すことが必要です。
しかしながら、病院において人事評価制度を導入していても、給与にまで反映させている病院は少ないのが現状です。特に公立病院においては医師の人事評価制度導入が遅れているように思います。ここでは公立病院における医師人事評価制度導入が困難な理由を考えてみました。
■理由その1 給与制度改正の煩雑さ
医師人事評価制度を導入した場合、
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次回配信は1月26日を予定しています
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