【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
7月20日に開催された「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」(第7回)の資料では、現在貸与物品とされている固定用スロープや歩行器、単点杖、多点杖などについて、貸与あるいは販売を利用者が自ら選べるようにするという案が示された。
これが「福祉用具の選択制」と呼ばれる提案だが、例えば歩行補助杖や固定用スロープなど比較的廉価で、ある程度中長期の利用が見込める福祉用具については、レンタルのメリット・デメリットを利用者自身が考慮・判断してレンタルを受けるか、購入するかを選ぶことができる。
国が福祉用具の選択制導入を議論の俎上に載せている理由ははっきりしている。選択制が導入されれば今までレンタルの対象としかされていなかった福祉用具について、購入を選択するケースが増えることになり、給付費の削減につながる。なぜなら、福祉用具販売単独サービスは、ケアマネジメント(居宅介護支援)の費用がかからないからである。
この選択制の議論は、「福祉用具販売のメニューを増やせ」という財務省の圧力は無視できないという意味もあるのだろう。また福祉用具貸与しか計画されていない利用者の居宅介護支援費の減額案が否定されたことで、それに代わる財源抑制策としてひねり出されたという理由もあるのだと想像する。
現行ではこうした福祉用具の貸与・購入の選択はできず、レンタル用品と購入用品は完全に区別されている。そして購入できる福祉用具は、他人が使用したものを再利用することに心理的な抵抗がある便器や尿器など13品目のみが対象となっている。
貸与品のメリットは、購入より価格が抑えられることと、利用者の状態像の変化などに応じて貸与品を変更できる点、さらに定期的にレンタル業者が点検・メンテナンスをしてくれる点にある。一方でデメリットは、レンタルする福祉用具のほとんどが新品ではないことから、(消毒されており、清潔度合いに問題はなくとも)神経質で見ず知らずの他人が使ったものに抵抗感を持つ人には向いていないという点である。選択制が実現すると、それらのメリット・デメリットを利用者自身が考えて選択できるようになるのだから、そのことに反対する必要はないと筆者は思っている。
■関係団体による選択制への異論に「説得力なし」
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