【元松阪市民病院 総合企画室 世古口 務】
前回は公立病院の赤字の原因の1つとして高額医療機器購入の問題点を説明しました。今回は公立病院における材料費、すなわち医薬品費、診療材料費購入の問題点について説明します。公立病院のみならず他の病院でも、病院経営の改善を図るには材料費の管理は非常に重要となります。材料費のほとんどは医師の診療行為により発生するものなので、医業収益に直結します。公立病院では、その他の病院と比較して医薬品費、診療材料費は高額になっています=グラフ1=。
最近ではどの病院でも抗がん剤、C型肝炎治療薬など高薬価の医薬品が使われるようになり、材料費の中で薬品費の占める割合が高くなり、医業収益に対する薬品費比率も高くなってきています。また診療材料費でも腹腔鏡下手術、胸腔鏡下手術が普及するのに伴い、これらに関係する材料費が増加し、医業収益に対する診療材料費比率もわずかながら増加傾向にあります=グラフ2=。 (残り3716字 / 全4976字) 次回配信は10月6日5:00を予定しています
今回は公立病院における医薬品費、診療材料費が高額になる理由と、購入金額削減に対する対応策について述べてみたいと思います。
公立病院の医薬品費、診療費の購入金額が高くなる理由
■理由その1 薬剤卸会社が多すぎる
経営状況の悪い公立病院では多くの薬剤卸会社が参入していることが経営状況を悪くしていることがありますので、卸会社が減少させ、1社あたりの取引額を増加させることにより値引き交渉すると有効に働くと思います。
■理由その2 医薬品、診療材料の価格交渉担当者の問題
診療材料費のコスト削減は、医薬品費より難しいとよく言われます。薬品の管理・価格交渉は薬局長が発注から使用まで一貫して行いますので、薬局長に病院経営改善の意識と力量があれば可能であります(私の勤務していました松阪市民病院では、薬局長が価格交渉で経営改善を達成すれば、人事評価制度において評価することで大きく改善!)。
一方、診療材料は発注・管理は事務職員、使用するのは医師、看護師と関係する職員が異なる傾向があります。医師、看護師も手慣れた物品を他のメーカーのものに変更するには、それなりの理由を理解してもらわないと簡単に変更することは難しいのです。価格交渉には、現場の医師と共に病院上層部の院長、副院長が直接携わることが重要で、購入金額の高い病院では上層部が関与していないことがしばしばみられます。
■理由その3 病院職員の経営状況の認識不足
毎月の会議で、診療科ごとの医業収益については、どの病院も職員に提示しています。医業収益の多い診療科でも、医薬品費、診療材料費が多くては病院経営に対する貢献度を正しく評価しているとは限りません。厳密に言えば、診療科ごとの原価計算が必要となりますが、少なくとも変動費である医薬品費と診療材料費を除いた利益(粗利益)を全職員に毎月提示して、病院経営における各診療科の実際の貢献度を理解してもらっておくと、医薬品費、診療材料費の価格交渉や変更の際に現場の協力が得られやすいと思います。
■理由その4 全国の病院とのベンチマーク分析
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