【元松阪市民病院 総合企画室 世古口 務】
公立病院の赤字の原因として、医療機器や材料費の購入費が挙げられます。今回は公立病院において他の公的医療機関(日赤病院、済生会病院、厚生連病院など)や医療法人病院より高額な医療機器を購入しているように思いますので、なぜそのようになっているのか、問題点をまとめました。
■その理由1 高額医療機器の購入経験のある事務職員がいない
「2022年度画像医療システム等の導入状況と安全確保状況に関する調査報告書」(日本画像医療システム工業会)によりますと、主な高額医療機器の買い替え年数は約12年です=グラフ1=。
このような高額医療機器を病院によっては複数台設置している所もあると思いますが、高額医療機器は毎年、購入するものではありません。公立病院では、3-5年で定期的な職員の異動があるため、前回購入した際の経験のある事務職員がメーカーに対応することはほとんどなく、新たな事務職員が対応することになり、メーカー側からすれば素人相手にビジネスを行うようなものです。この点が事務職員の異動が少ない他の公的病院、医療法人の病院と大きく異なり、公立病院はメーカー側の提示金額をそのまま信用して高い金額で契約してしまうことが多いと思います。
■その理由2 病院事業債を活用して購入
病院新築の場合と同じように公立病院で高額な医療機器を購入する際に、多くの病院では国の病院事業債(起債)という長期借入金を財源にすることが多いのが現状です。ただし不良債務比率が10%以上ある経営状況が良くない病院では病院事業債が活用できないことがあります。不良債務とは年度末において、流動資産(現金預金、未収金など)を流動負債(一時借入金、未払金など)が超える場合であり、資金繰りができなくなっていることを示します。
国からの病院事業債を利用する場合、元利償還金(元金+利息)の2分の1が各自治体の一般会計から病院事業に繰り出され、このうちの2分の1が、交付税措置として国から支援されるため(病院事業債全体から見れば25%)、実質の各自治体の負担は病院事業債の25%となり、よって実際に病院会計の負担は残りの病院事業債の50%となります=図=。
要は高額で医療機器を購入してもその費用の半分が交付税で補填されることになります。事実上の国からの補助金であります。このことをメーカー側もよく知っていて高額な金額を提示し、契約する傾向が見られます。
■その理由3 「半値、八掛け、2割引き」で購入するも、高額な保守点検料
経営状況の良い病院では、
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次回配信は9月22日5:00を予定しています
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