【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
前稿で取り上げたように地域医療構想と診療報酬は別物とは言えない状況になりつつある。とはいえ、医療提供は地域の実情に合わせることが望ましく、全国一律での誘導は難しい面があるのも事実である。このことは、病院経営においても最も重視すべき事項であり、診療報酬などの制度を熟考しつつ、地域の医療提供体制を見据えた戦略的病院経営が求められる。自院がやりたいことが、地域で求められていることとは異なることもあり、ミスマッチは避けたい。理想と現実のバランスをどう考えるかが病院経営における重要課題である。
図1は、地域医療構想における機能別の必要病床数の推計と病床機能報告の状況であり、やはり急性期が過剰で回復期機能が過小であるという状況が示されている。
ただ、この必要病床数は本連載でも繰り返し述べてきたが、2013年の受療率を基にしており、その後、受療率が一貫して低下している状況からすると、そもそもこれだけの病床は不要なのだと考えるべきだろう=グラフ1=。
一方で、7対1の急性期病床は過剰な状況が続いている=図2=。
06年に7対1入院基本料をつくった際には、当初2万床を想定していたが、ピークでは38万床で、その後、若干減少したものの、横ばいで推移している。ただ、7対1を届け出る病棟も稼働率が下落しており、病床を開いたところで埋まらない状況に陥っているのも事実である=図3・4=。
それに追い打ちをかけるかのように、7対1などのコロナ医療を提供した病院から看護師が立ち去り、病床を開けないという現実も直視すべきである。
そして、コロナの空床確保の補助金も終わりを告げようとしている今、何をすべきだろうか。私は病床機能の見直しに着手すべきであり、それが病院経営の健全化につながり、結果として地域医療構想の実現に近づくものだと考えている。
本稿では、病院機能別の病床機能の見直しについての標準的な考え方を提示する。なお、「標準的」というのは、地域特性や組織の成熟度などが関係し、病院個別で考える必要性があるからだ。戦略には定石がある一方で、オーダーメイドで策定しなければ、実効性に乏しくなり、功を奏しない。
まず初めに高度急性期病院の戦略について考える。
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次回配信は9月11日を予定しています
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