【元松阪市民病院 総合企画室 世古口 務】
古い考え方の上層部が多い公立病院では、いまだに「病院は、医師、看護師、薬剤師が足りていればやっていける」と考えています。実際に公立病院では、そのような病院がしばしば見受けられます。公立病院では、職員定数や人件費の問題からコメディカル職員の増員が進んでいません。それよりも上層部がコメディカル職員の病院運営における重要性を認識していないのが現状です。
最近の診療報酬制度を見ても、コメディカル職員を十分に配置している病院では、診療報酬での高い点数が得られます。それだけでなく、患者、家族の満足度も向上し、さらに現場のコメディカル職員の労働に対するモチベーションも上がり、職員の働き方改革にも直結すると言っても過言ではないでしょう。しかしながら、「公立病院では病院職員の定数の問題があり、簡単にコメディカル職員の増員は難しい」という答えが返ってくると思います。
昨年まで勤務していました松阪市民病院の職員数の推移についてお話しします。病院経営が危機的な状況でありました2006年の全職員数は401人(常勤職員:298人(このうち医師は39人)、非常勤職員:103人)。病床規模、建物は変わらず、全職員の意識改革と努力により大きく経営改善を達成した21年の全職員数は700人(常勤職員:516人(このうち医師は41人)、非常勤職員:184人)と大幅増となりました。
しかし人件費比率を見ますと、06年度は58.7%でしたが、21年度では49.7%であります。職員の大幅な増員にも関わらず、人件費比率が10ポイント近くも下がったのは、医師の努力のみならず、コメディカル職員の増加により、医業収益が大きく増加したことが大きな要因であります。
公立病院におけるコメディカル職員に対する問題点をまとめました。
(1) 病院上層部(院長、事務部長など)が、診療報酬制度を正しく理解せず、コメディカル職員の働きの重要性を認識していません。当然ながら、本庁の人事部もいまだに「病院は医師、看護師、薬剤師が重要」との考え方を持っているところが見受けられます。
(2) 病院上層部がコメディカル部門の実績を正しく評価していません。
(3) コメディカル部門の働きについて、民間病院、公的病院とのベンチマーク分析を実施し、現場にもその結果をフィードバックしている病院が少ないように思います。
今回は、この中でも病院経営に大きな影響を及ぼすリハビリテーション部門について取り上げてみました。急性期医療を担う病院、特に公立病院では、これまで病院上層部が、リハビリテーションの重要性を認識していませんでした。現在では、診療報酬制度でも急性期病院におけるリハビリテーションの重要性が評価されています。リハビリテーションの重要性についていくつかのポイントを挙げてみます。
(残り3457字 / 全4635字)
次回配信は8月25日5:00を予定しています
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】