【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■病床利用率はコロナ前後で5ポイント程度減少
一般病床の病床利用率の推移を見ると、コロナ以前から減少傾向であった=グラフ1=。
このような利用率低下は、「重症度、医療・看護必要度」の厳格化や、DPC制度(階段状の点数設定や機能評価係数IIの効率性係数)など、さまざまな理由が積み重なった結果と認識している。高い利用率を維持するのが難しくなっていることは、病院経営的にネガティブな点である。一方で、高齢化により救急搬送などが増加する環境変化に対し、病床をあまり増やさず限られた医療資源を効率的に利用していることは、医療経済的にポジティブな点である。
グラフ1を見るとコロナ後は病床利用率が明らかに急降下した。2010年代の水準と比較すると、20年と21年は4ポイントから5ポイント程度、病床利用率が低下した。コロナの影響は、コロナ初期の外出抑制による受療者の減少を招き、患者・医療従事者の感染や空床確保のための診療機能制限などを強いられている。
■コロナの危機感はかなり薄れつつあるのに、依然厳しい病床利用率
コロナの影響による診療機能の制限は何度となく繰り返されており、5月に5類に指定された以降も状況は必ずしも良くなっていない。しかし初期の緊急事態宣言下のような緊迫感は特に一般市民レベルではかなり薄れ、健診なども含めた受療行動はコロナ以前の状況に戻ってきつつあるように感じる。そこで、月次の病床利用率(月末時点)の推移を見た=グラフ2=。
やはりコロナ後に病床利用率が低下した。20年2月以前をコロナ前、20年3月以降をコロナ後としグラフに表記した期間の平均値を比較すると、コロナ後には6.4ポイント低下している。また、統計的な解析はしておらず、あくまでもグラフを見た感想レベルでは、コロナ後の病床利用率は、直近になっても上昇傾向ではなく、ほぼ横ばいである。
恐らく、コロナ後もこのような厳しい状況が依然続いていることに対し、日本病院会の相澤会長が強い危機感を示されているのではないだろうか。(CBnews7月25日「日病・相澤会長、病院の入院患者減に危機感」記事参照)
■病床利用率の地域差から何が見えるか
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次回配信は8月23日5:00を予定しています
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