【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
コロナが5類に変更された今も入院患者が元の水準に戻らない病院は多い。そんな中で、平均在院日数の短縮は続き、病床利用率は悪化する一方だろう。コロナ病床を確保しながらも一定の新入院患者を受け入れることができ、多くの病院はより筋肉質になったわけなので、いまさら元の体質に戻そうと考えるはずもなく、さらに効率的な病床マネジメントを追求するようになるだろう。鍛えだしたら止まらないのが人間の本能ではないだろうか。
実際、DPC参加病院の平均在院日数は全ての医療機関群で短縮傾向にあり、今後もさらに拍車が掛かることが予想される=グラフ1=。なお、2020年度はコロナの打撃を一番受けた時期であり、第一四半期の特に4、5月に予定手術を大幅に制限し、全国で前年のおよそ半分になり、眼科や耳鼻科などの比較的短い疾患の患者が入院しなかったことが、退院患者の平均在院日数を少し延ばした。ただ、同一疾患での在院日数は確実に短縮傾向にあるはずだ。
今多くの病院は、コロナ前に患者数を戻そうと必死に努力しており、コロナで閉じていた病床の復活も考えているかもしれない。ただ、看護師も集まらず、開棟できないという声も多く耳にする。現実的に考えれば、コロナで閉じていた病床は多くの病院にとってはそのままにすべきであり、必ずしも元に戻す必要はなく、病床再編を考えるべきだと私は考えている(連載第127回等を参照)。
グラフ2は、前回改定後の22年4-6月について全国の急性期病院の一般病棟における「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)を入院経過日別に見たものである。手術あり患者は入院日についてはそれほど看護必要度が高くないが、2日目以降一貫して高水準で推移する。 (残り1748字 / 全3222字) 次回配信は8月7日を予定しています
これは、入院翌日に手術を実施する患者が多いからであり、C項目の評価が非常に手厚いことが関係している。一方で手術なし患者の看護必要度は極めて低い。ただ、最初の5日間はA項目で救急車搬送入院あるいは救急医療管理加算等が評価されており、手術なし患者に救急患者が多いことがこのような傾向を示している。間をとった「全体」は11、12日程度で現状の看護必要度の基準値付近に近付くこととなり、つまりDPC参加病院の平均在院日数である入院期間IIを意識せよということを意味する。なお、手術なしの6日目以降について22年度診療報酬改定前は20%を上回っていたが、改定で心電図モニターの管理が削除された影響でかなりの低水準となっている。
結局、看護必要度では、全身麻酔などの手術患者をいかに獲得するか、そして救急医療との両立を図りながらも、在院日数をいかに短縮するかが求められている。
このことは本連載で取り上げてきた急性期充実体制加算やDPC特定病院群でも同様であり、医療政策及び診療報酬における一貫したメッセージだと捉えるべきだろう。
急性期充実体制加算では、救急について救命救急センターの承認を受けるか、救急車2,000台などのハードルがあり、全身麻酔件数も2,000件などであり、さらに7日以内の点数が非常に高いことから在院日数短縮に対するインセンティブが設けられている(連載第199回参照)。
DPC特定病院群でも、予定入院に軸足があり、結果として手術は多いが、救急車搬送とのバランスをとりつつ、高回転の病床運営を行っていた(連載第197回参照)。
私見ではあるが、これからはDPC/PDPSにおける入院期間Iの大幅な点数アップが行われるだろう。
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】