【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2022年度診療報酬改定において高度かつ専門的な急性期医療を提供する急性期一般入院料1を届け出る病院に対する評価として急性期充実体制加算が新設された。従来の総合的で高度な医療を提供することが評価されてきた総合入院体制加算と比べて非常に高い報酬が設定されており、高度急性期を志向する多くの病院は急性期充実体制加算の届け出を目指してきた。
グラフ1は、急性期充実体制加算の届け出病院数を算定開始日別に見たものであり、23年6月1日現在で(東北厚生局のみ5月1日現在)、既に213病院が届け出ている。
22年10月1日時点では161病院だったので、約半年で52病院が届け出たことになる。今後も虎視眈々と当該加算の届け出を目指している病院が多数あるわけで、このままでいくと300病院を超えるのも時間の問題だろう。DPCの特定病院群も増加傾向にあるが現在181病院であることからすれば、想定の範囲外に増加しつつあるという捉え方もあるのかもしれない=グラフ2=。
なお、これに伴い総合入院体制加算の届け出病院数は連載第168回で予想した通り減少しており、特に総合入院体制加算1・2の病院が急性期充実体制加算にランクアップしたものと予想される=グラフ3=。
当然これに伴い総合入院体制加算の算定額も減少したわけであり、社会医療診療行為別統計によると21年6月から22年6月審査分に向けておよそ半額となっている=グラフ4=。
一方で、急性期充実体制加算は22年6月審査分で36億円を超える額が算定されており、高度急性期病院に対する手厚い評価が行われたことになる=グラフ5=。
特に7日以内の算定が全体の56%を占め、入院初期の点数を高く評価し、DPC/PDPSでも出来高算定とするなどの在院日数短縮のインセンティブが有効に機能したともいえるだろう=グラフ6=。
急性期充実体制加算については、入院医療等の調査評価・分科会で急性期一般入院料1を届け出る病院であっても、ICUなどの集中治療室を有する病院とそうでない病院では、機能に差があり、そのことを評価しようという趣旨があったと予想するし(連載第150回参照)、コロナ禍で必死に頑張った高度急性期病院に対する手厚い評価をしようという意図があったのだろう。ただ、財源の制約がある中で、当該加算をどう評価していくかはわが国の急性期医療の未来に強い影響を及ぼすものと考える。急性期充実体制加算の届け出病院をこのペースで増やし、それ以外との差を付けるという考えもあるだろうし、本当の高度急性期病院を評価したいのであれば、現状の基準を再考するという考え方もあるだろう。そこで本稿では、これからの急性期充実体制加算についてのいくつかの論点を提示する。
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次回配信は7月24日を予定しています
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