【元松阪市民病院 総合企画室 世古口務】
公立病院が赤字になる大きな原因の1つに職員に対する給与費の問題があるように思われます。そうは言っても残念ながら、公立病院の経営改善のために給与費を簡単には削減できないことを、お含みおきください(経営改善のため時間外手当など給与費削減を試みて失敗した公立病院は多数見られますので、くれぐれもご注意ください)。
資料1は病院における職種別の給与費を公立病院、公的病院、医療法人病院で比較したものです。医師以外の職種では、公立病院に勤務する職員の給与費が公的病院、医療法人病院に勤務する職員より高額であることが分かります。特に看護師、事務職員の給与の差が大きいことが特徴です。病院職員の中でも、ほぼ過半数を占めている看護師の給与費は医業支出の中で大きな割合を占めています。
そこで、開設主体別の看護師の年収について見たものが資料2です。月額給与(公立病院は毎年必ず昇給:月当たり6,000-7,000円)、年間賞与(公立病院は通常、月間給与のほぼ4カ月分)共に公立病院に勤務する看護師が最大で、当然ながら年間収入も最大になっており、特に民間病院とは大きな差が認められています=資料2=。
特に2020年8月の調査では、新型コロナ禍の状況では、年間賞与も支払われなかった病院(0.8%)、減額された病院(27.2%、大学附属病院でも!)もあったようで大きな問題にもなりました。
しかしながら、公立病院では、新型コロナ禍でも従来通りに年間賞与が支払われています。さらに、民間病院と大きな差が付くのが、退職時に支払われる退職金であります。公立病院では勤務年数が長ければ長いだけ退職金計算の際の支給率が高くなり、退職金は高額になります。一般の看護師でも定年まで勤務していれば、退職金は約2,000万円が支払われています(定年退職で勤続年数40年の場合、通常、俸給月額のほぼ50カ月分の退職金が支払われています。医療法人病院の2倍以上!)。
さらに看護師でも役職に就いていれば、当然これよりも高額になります(事務職員でも、定年まで勤務していれば約2,000万円の退職金になります。当然役職に就いていれば看護師と同様に、この金額よりも高額)。自己都合で途中退職してしまうと退職金に対する支給率が低くなるのです。このことを知っていれば、看護師の離職率にも影響する
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次回配信は6月23日5:00を予定しています
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