【千葉大学医 学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
連載第171回では地域医療支援病院の業務報告データから、承認を受ける病院の実態に迫った。それらの病院は紹介率・逆紹介率などの基準を充足しているわけだが、一般病床100床当たりの逆紹介患者数や初診患者数に明らかな違いがあり、一定のテクニックなどを用いて基準を満たしているケースがある可能性を示唆した。ハードルを越えるためにある程度のさじ加減はあってもいいのかもしれないし、時としてそれが必要になることもあるだろう。ただ、急性期病院に求められているのは積極的な逆紹介であり、かかりつけ医との役割分担は重要である。外来機能報告を踏まえ紹介受診重点医療機関について地域の協議の場での検討も今月から開始される。そこで、本稿では急性期病院に求められる外来診療機能について高度急性期病院の代表である特定機能病院のデータを用いて改めて検証していく。
なお、地域医療支援病院は2023年2月末現在で673病院が承認を受けている(医療施設動態調査)。一般病院数が7,096なので、全体に対する比率は約9.5%と、限られた病院という印象を受ける。ただ、地域医療支援病院の9割以上がDPCに参加する急性期病院であり、DPC参加病院全体に占める200床未満の割合は4割を超えている。地域医療支援病院は原則として200床以上であることからすると、200床以上のDPC参加病院のおよそ8割は地域医療支援病院の指定を既に受けていることになる。だとすると地域医療支援病院の全てが高度急性期機能を有しているとは考えづらいことになる。もちろん一定の紹介・逆紹介の機能は果たしている急性期病院であることは事実だが、機能分化と連携という視点からは高度急性期病院はそれに徹することが期待される。そこで、本稿では特定機能病院の実態に迫っていく。
グラフ1は入院患者に対する外来患者比を病床規模・機能別に見たものであり、最も高いのが特定機能病院で、次いで100床未満となる。19年6月のデータであるためコロナの影響は受けていない。
さらにグラフ2は新来患者に対する再来患者の比であり、特定機能病院が突出している状況を確認できる。
つまり、特定機能病院は入院患者に対して外来フォローが非常に手厚く、結果として再来患者が多いことを意味する。高度急性期に対応できる医療機関が整備されておらず逆紹介先が見つからないという面もあるし、一方で大学病院が中心となる特定機能病院であり医師が多く比較的コストパフォーマンスに優れる労働力があるから外来で稼ごうという発想なのかもしれない。患者としても、「大学病院にかかっているのだから安心」と思っているのかもしれない。
ただ、個別の病院の実態に迫ると事情は異なるようだ。
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次回配信は6月5日を予定しています
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