【千葉大学医 学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長 、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
2024年から始まる医師の働き方改革に向けて各病院は粛々と取り組みを進めていることだろう。特効薬があるわけではなく、1つ1つ着実に進めていくことが必要である。その際にタスクシフトは重要であることは言うまでもなく、看護師がその対象になりやすい。ただ、看護師の業務も多様化・複雑化しているのが事実であり、看護補助者を積極的に採用し、組織全体で負担軽減を実現していく仕組みが求められる。
連載第128回では働き方改革に沿った真水の増収策として、大幅に診療報酬が引き上げられてきた急性期看護補助体制加算等を挙げ、その重要性について事例を交えて提案した。ただ、この原稿執筆時点はコロナ禍で入院患者数が大幅に減少していた時期でもあるし、失業者が大量に出始めた時期でもあった=グラフ1=。ところが、コロナ禍でいったん下がった有効求人倍率は再び元の水準に戻ろうとしているし、今後あらゆる業種で人手不足が予想されている=グラフ2=。さらに社会全体として賃上げにシフトしようとしている今、補助者の獲得は従来よりも厳しくなる可能性が高い。医療界でなく、他の業種と人材獲得の競争をしているという見方もできるわけで、仮に診療報酬が上がらなければ私たちだけが社会から取り残されてしまう危険性もある。
本稿では、看護補助者配置の実態を明らかにし、特に高度急性期病院で不足する看護補助者の採用について私見を交えて提案する。
グラフ3は21年度の病床機能報告データを用いて、全国の病院ごとの常勤換算看護師数と常勤換算看護補助者数を見たものであり、両者には有意な正の相関はみられない。病院機能や特性によっていずれに重きを置いているかが異なる可能性がある。
そこで、グラフ4は病床規模別に100床当たりの看護師数と看護補助者数を表したものであり、規模が大きくなると看護師数は増えるが、看護補助者が減少する傾向が明らかである。さらに7対1看護師配置である急性期一般入院料1を届け出る施設のみを対象とし同様の集計をしてみると傾向は変わらない=グラフ5=。中小病院は看護師が集めづらいので、早くから看護補助者を積極的に採用してきたのか、高齢患者が多いため補助者が担う役割が多いことなどを意味するのかもしれない。
ただ、大病院には看護補助者が不要かというと決してそうではなく、看護師がより輝ける職場づくりのために看護補助者の有効活用は課題といえるだろう。さらに病院機能別に100床当たりの看護師数と看護補助者数を見たものがグラフ6であり、高機能急性期病院において看護師は充実しているが、看護補助者の不足感は否めない。
では、看護補助者の充実のためにどのような選択肢があるのだろうか。
(残り2261字 / 全3417字)
次回配信は5月1日5:00を予定しています
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】