【千葉⼤学医学部附属病院 副病院⻑、病院経営管理学研究センター⻑、ちば医経塾塾⻑ 井上貴裕】
■急性期病院にとっての全身麻酔の重要性
急性期病院にとって全身麻酔は極めて重要であり、高度急性期といいうるためにはその実施率に注目するべきである。グラフ1は、退院患者に占める全身麻酔の割合を病床規模別に見たものであり、大病院ほど全身麻酔の実施率が高い傾向にある。中小病院は心不全や誤嚥性肺炎などの高齢者に対する救急搬送が多いことなどが関係しているのだろう。
急性期のバロメーターである入院診療単価を高めるためにも、手術、特に全身麻酔は重要であるし、その患者を早く退院させることが強く求められる。このことは、「重症度、医療・看護必要度」でも同様であり、2020年度診療報酬改定においてC項目の手厚い評価が行われたこととも整合する。
さらに全身麻酔件数は22年度改定で評価された急性期充実体制加算の要件でもあり、そこでは2,000件以上(300床未満については1床当たり6.5件以上)が求められる。
連載第166回では19年度のデータを用いて病床規模別の全身麻酔件数を見たが、本稿ではコロナ禍で最も厳しかったタイミングである20年度データに差し替えたものの、傾向は変わらず大病院ほど件数が多い=グラフ2=。ただ、これは病床数が多いのだから当然であり、総病床1床当たりの全身麻酔件数にしてもやはり大病院の実績が優れる。ただし、100床未満および800床以上については、傾向が異なり、何らかの専門病院の実績が影響していることに加え、800床以上では内科系の難治疾患患者が多く、病床数が多すぎることが関係しているのだろう=グラフ3=。
■急性期充実体制加算のハードル設定は妥当なのか? 国が求める方向性
ところで急性期充実体制加算の2,000件というハードル設定は妥当なのだろうか。
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次回配信は3月20日5:00を予定しています
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