【千葉⼤学医学部附属病院 副病院⻑、病院経営管理学研究センター⻑、ちば医経塾塾⻑ 井上貴裕】
前稿では2024年度診療報酬改定について入院料などの医療提供体制に関わるであろうと予想される大枠の論点を提示した。ただ、これらに影響を与えうる重要な個別論点も存在するわけであり、その中核の1つとして挙げられる救急医療管理加算について本稿ではいま一度、その実態に迫っていく。
グラフ1は救急医療管理加算について年代別の推移を見たものであり、緩やかに増加していく傾向にあり、今後も続くだろう。75歳以上が一定割合を占めており、特に85歳以上の算定が増加している。高齢化が進むことにより、心不全や誤嚥性肺炎などの患者が増加し、その患者に救急医療管理加算を算定している病院が多いことを意味する。
そのことを反映してなのか、救急医療管理加算1については算定件数が減少し、加算2に置き換わる傾向がある=グラフ2=。なお、20年度の「臨時的取扱」はコロナに関連する特例の報酬であり、それを除くと算定件数が減少しているのはコロナ禍の影響である。
なお、全国のDPC参加病院で緊急入院患者に占める救急医療入院の割合を見ると上昇しており、救急医療管理加算の算定率は上がっている=グラフ3・4=ただ、やはり加算2がその半数を占めるまでになっており、これは高齢者救急が増加し、診療密度がそれほど高くない患者割合が高まっていることに加え、診療報酬改定の動向や保険者の財政事情などによる保険審査の事情が影響しているのだろう。つまり、加算1は厳格化にあるが、加算2だったら通してもよいという方向感にもあることが予想される。
救急医療管理加算の地域差が存在することは本連載でも繰り返し取り上げてきた。救急医療係数についてコロナ前の評価期間である20年度のデータを用いるとグラフ5のようになる。グラフ5の縦軸はDPC/PDPSにおける機能評価係数IIの6項目のうちの1つである救急医療係数を都道府県別に集計したものであり、横軸は緊急入院患者に占める救急医療入院の割合を見たものである。全てのDPC参加病院のデータが含まれているが、機能評価係数IIは年度ではなく、10月から9月が評価期間であることなどもあり、完全に整合性が取れているわけではないものの正の相関をしている。つまり、救急医療管理加算の算定率が高い地域は、救急医療係数も高くなる傾向があることになる。なお、これは個別病院でも当てはまることであり、救急医療管理加算の算定が増えると救急医療係数も上昇する。ただし、両者にはタイムラグがあることには留意されたい。
では、この散布図で右上にあり緊急入院患者に占める救急医療入院の割合が高い地域で差があるのはなぜだろうか。
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次回配信は2月6日5:00を予定しています
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