【千葉⼤学医学部附属病院 副病院⻑、病院経営管理学研究センター⻑、ちば医経塾塾⻑ 井上貴裕】
年が明け、2023年が始まった。社会情勢が不安定な中、医療機関を取り巻く環境の不確実性が今まで以上に増しており、まさに「先が見えない時代の戦略的病院経営」が問われる一年となりそうだ。
この6月には24年度診療報酬改定に向けての基礎資料となる医療経済実態調査が行われ、秋口にはその結果が公表される。そこでは一般病院、特に特定機能病院やDPC参加病院などで損益差額がコロナ前である19年度と比べて著しく悪化しているが、コロナの空床確保の補助金を入れると大幅に改善しているという結果となることが予想される。
患者数、特に入院患者数が伸び悩んでいることが主たる要因であるが、それに加え光熱費等の費用の高騰も影響している。これについて、コロナ補助金を含めればかつてないほどの利益が出ているのだから、病院の業績は悪くないという解釈もできるだろう。確かに多額の補助金を受け取り過去最高益という病院があるのも事実である。ただ、コロナ補助金の終焉が近づきつつある今、将来に向けて不安を抱える病院経営者は多い。とはいえ、病床規制があり、参入障壁が比較的高く、かつ診療報酬という公定価格である規制産業に身を置く我々は、自由競争にさらされる業種よりも恵まれている面もあるのかもしれない。もちろん、規制があるがゆえに、自由な身動きが取れないという反作用も存在するわけだが。
ただ、だからこそ、医療政策と診療報酬がどこに向かうかは極めて重要であり、本稿では今年議論が展開される24年度診療報酬改定およびその後に向けて、その議論と方向性について私見を交えて展望する。
24年度診療報酬改定の主たる論点として個人的な見解も含め、以下の5点に注目している。
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次回配信は1月23日5:00を予定しています
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