2022年度診療報酬改定では、医療機関の機能や患者の状態に応じて入院への評価にめりはりを付ける。その一環で、急性期の入院では一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)の測定項目を変更する。また、急性期一般入院料1の算定病院向けに「急性期充実体制加算」を新設し、高度・専門的な医療の提供実績などを評価する。【川畑悟史、兼松昭夫】
■A項目見直し、受け入れ割合は維持・緩和
急性期一般入院料は、7つのうち現在の入院料6を廃止し、入院料7を新たな「急性期一般入院料6」に繰り上げ、6つに再編する。新たな急性期一般入院料6は、入院料7の1,382点を維持する。ただ、3月31日時点で急性期一般入院料6を届け出ている病棟は9月30日まで見直し前の点数を算定できる。
一般病棟用の看護必要度の測定項目は、入院患者の「モニタリング・処置等の実施状況」を評価するA項目を見直す。
大きく8つあるA項目のうち、「心電図モニターの管理」を削除し、「点滴ライン同時3本以上の管理」を「注射薬剤3種類以上の管理」に変更する一方、「輸血や血液製剤の管理『あり』」の得点を1点から2点に引き上げる=表1=。
看護必要度は、「モニタリング・処置等の実施状況」(A項目)、「患者の状況等」(B項目)、「手術など医学的状況」(C項目)の3つの観点を組み合わせ、入院患者に急性期の治療が必要かを判断する。
一般病棟の場合、看護必要度が▽A項目2点以上・B項目3点以上▽A項目3点以上▽C項目1点以上-のいずれかに該当する患者を「急性期の医療が必要」と見なす。
診療報酬が高い急性期一般入院料1の届け出には現在、そうした患者の割合を、看護必要度を従来の方法で測定する「看護必要度I」なら全体の31%以上に、DPCデータを使って測定する「看護必要度II」では29%以上にする必要がある。
表1 一般病棟用の「重症度、医療・看護必要度」(A項目)の見直し
出典:厚生労働省の資料を参考に編集部で作成
A項目を変更する一方、この「急性期患者」の受け入れ割合の基準は維持・緩和することになった。
新たな基準は、急性期一般入院料1が看護必要度I「31%以上」、必要度II「28%以上」。急性期一般入院料5が看護必要度I「17%以上」、必要度IIが「14%以上」など(いずれも許可病床200床以上の場合)=図=。
■「200床以上の急性期入院料1」は必要度IIに
ただ、急性期一般入院料7からシフトする新たな入院料6には受け入れ割合の基準を設定せず、測定の実施のみを求める。また、許可病床200床未満の中小病院では基準をさらに緩和する=図=。A項目の見直しによる影響は、200床以上に比べ200床未満で大きいと見込まれることがシミュレーションで分かったため。
急性期一般入院料1-5のいずれかを3月31日時点で届け出ていれば、9月30日まではそれぞれの基準をクリアしていると見なし、10月から新たな基準が適用される。
一般病棟用の看護必要度の見直しではほかに、急性期一般入院料1を算定する許可病床200床以上の病院で必要度IIの活用を必須にすることになった。
200-399床の病院に対しては、看護必要度IIの基準をクリアしていると年内いっぱいは見なす。この取り扱いが終了する23年1月以降、急性期一般入院料1を算定する200床以上の病院に、看護必要度Iの受け入れ割合「31%以上」の基準は適用されないことになる。
看護必要度IIの活用を義務付ける対象の見直しは20年度から2回連続。看護必要度の測定に伴う現場の業務負担を和らげ、「測定の適正化」をさらに進めるという。
看護必要度のルールの見直しは20年度に続き中央社会保険医療協議会の議論の大きな焦点になった。新型コロナウイルスの感染拡大への対応に医療現場が追われる中、診療側は評価項目の変更見送りを繰り返し主張した。支払側は、受け入れ患者の状態を報酬に適切に反映させるため厳格化を求めた。結局、意見を調整できず1月26日、中立の公益委員の裁定で決着した。
中医協が答申書と共にまとめた22年度改定の附帯意見では、適切な評価指標や測定方法を次回以降の改定に向けて引き続き検討するとしている。
図 急性期一般入院料の「患者割合」の基準と点数の見直し
出典:厚生労働省の資料を参考に作成
■急性期充実体制加算、地ケア入院料届け出NG
急性期医療では、急性期一般入院料1を算定する病院向けに急性期充実体制加算と「精神科充実体制加算」を新設することも決まった。
急性期充実体制加算は、全身麻酔の手術など「高度・専門的」な医療の提供や24時間救急対応の実績、退院支援機能の充実などを後押しし、急性期一般入院料1の評価にめりはりを付ける。
入院期間に応じて点数を3段階で設定する=表2=。「総合的・専門的」な急性期医療の提供体制を評価する総合入院体制加算1(1日240点)に比べ、「7日以内」なら220点、「8日以上11日以内」でも10点上回る計算だ。ただ、ハードルは高い。
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