【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■看護師目線ではわずか「月額4,000円」も、経営者目線では少なくない
岸田政権が総選挙で掲げた政権公約において、「看護師、介護士、幼稚園教諭、保育士をはじめ、賃金の原資が公的に決まるにもかかわらず、仕事内容に比して賃金の水準が長い間低く抑えられてきた方々の所得向上に向け、公的価格のあり方を抜本的に見直します」と記された。総選挙後、「月額4,000円」という具体的な金額が明記された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が11月19日に、2021年度補正予算案が11月26日に、それぞれ閣議決定された=資料=。
資料 補正予算案で明記された看護職員等の月額4,000円引き上げ
2021年度厚生労働省補正予算案(参考資料)III.未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動 より引用
補正予算案の内容を見ると、看護職員の収入月額4,000円引き上げはあくまでも前倒しの措置であり、段階的に収入を3%程度引き上げることとしている。また、看護補助者や理学療法士・作業療法士等のコメディカルも処遇改善の対象とすることができるような、柔軟な運用を認めている。
来年2月からの月額4,000円引き上げは、看護師目線では「少な過ぎる」と不満が出かねない金額だろう。しかし、経営者目線では、医業費用を0.3%程度、病院の給与支払額を0.6%程度、福利厚生費なども含めた給与費を0.5%程度それぞれ押し上げるインパクトがある(※3)=グラフ1=。医業利益率が低い水準で推移していることを考えると、たとえ月額4,000円であっても医療機関の負担は重い。また、その時々の運営状況を踏まえた一時金ならまだしも、一度上げてしまうと下げることが難しくなる、ベースアップでの対応は判断が難しい。
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次回配信は12月22日5:00を予定しています
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