【国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 教授 石山麗子】
「ケアラー」「ヤングケアラー」という言葉を、ニュースや新聞などのさまざまな場面で見聞きすることが多くなった。ケアラーと介護者、ヤングケアラーと若年介護者は同義だろうか。これらを適切に理解し、的確に使い分けている人はまだ多くはないようだ。社会福祉法の改正に伴い、包括的支援事業、重層的支援体制整備事業等が進められつつある。対象者をどう捉えるかは、言葉の定義や概念の影響を受ける。さらにそれが、対象者に向ける専門職の姿勢や、いかに支援するかという支援内容の判断へとつながっていく。
ケアラーやヤングケアラーの早期発見・対応が必要だと言われる今、保健医療福祉分野の専門職には、用語の正確な理解、的確な対応が求められる時代に入った。そこで今回は、ケアラー・ヤングケアラーに関し、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに何ができるのかを述べていく。
全国的に見ると、ケアラー支援に最も早く着手したのは、埼玉県ケアラー支援条例を2020年3月31日に公布、施行した埼玉県である。ここで、なぜその名称が「介護者支援条例」ではなかったのかと、疑問に思う人もいるだろう。とりわけ、高齢者支援に関連するであろうこの条例に、カタカナ言葉を使ったのはなぜか。それは、介護者よりもケアラーを指す範囲が広いためである。埼玉県ケアラー支援条例の定義は次の通りだ。
〇ケアラー:高齢、身体上又は精神上の障害又は疾病等により援助を必要とする親族、友人その他の身近な人に対して、無償で介護、看護、日常生活上の世話その他の援助を提供する者をいう
〇ヤングケアラー:ケアラーのうち、18歳未満の者をいう
もう少し分かりやすくするために、日本ケアラー連盟の示すケアラー・ヤングケアラーに関する説明を引用する。
ケアラーは、直接的な介護や見守りのほか
・遠くに住む高齢の親が心配で頻繁に通っている。
・アルコール依存・薬物依存やひきこもりなどの家族をケアしている。
ヤングケアラーは、直接的な介護や見守りのほか
・日本語が第一言語ではない家族や障がいのある家族のために通訳をしている
・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている
・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている
・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている
-などが含まれている。
高齢者の領域における家族支援とは、一般に介護を担っている家族を想定しているが、ケアラー支援条例では、いわゆる直接的な介護だけではない上に、対象範囲として18歳未満にも目を向けていることが特徴だ。ヤングケアラーの実態調査として、埼玉県が県内の高校2年生に対する悉皆調査を行った結果、ヤングケアラーの数は、約25人に1人、クラスに約1人ということが分かった。国においても同程度の結果が出ている。
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