【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■100床未満の病院では、データ提出加算はわずか年100万円程度の報酬
医療分野におけるEBMを参考に、介護分野においても「科学的裏付けに基づく介護(科学的介護)」の取り組みが加速している。2021年度からはCHASE・VISITを一体的な運用とし、名称もLIFE(Long-term care Information system For Evidence)となった。社会保障審議会の議論などを見ると、まだ課題は多いようだが(「21年度介護報酬改定検証調査で意見多数」など参照)、データ提出により各事業所がフィードバックデータを受け取り、PDCAサイクルを推進してケアの質向上につなげようとする取り組みは、今後も介護報酬などで後押しされていくだろう。
医療の領域においては、データに基づく取り組みがもともと先行している。データ提出加算の届出状況を見ると、年々その取り組みが加速していることが分かる=グラフ1=。
グラフ1 データ提出加算 届出施設割合
各地方厚生局 届出受理医療機関名簿を基に作成(年月は調査時期)
※一般病床と療養病床の有無で3つにグルーピング(精神病床などの有無は問わない)。一般・療養病床を持たない施設は含まない
一般病床を有する施設では、8割以上の病院がデータ提出加算を届出している。療養病床のみの施設では、3年前は1割程度と少なかったが、5割弱まで急拡大した。背景には、20年度診療報酬改定に代表される要件化がある=図1=。データ提出加算の点数獲得を目的に届出しようという積極的な理由よりは、むしろ「届出が必須になったのでやむを得ず」という、消極的な理由が急拡大の要因だろう。
図1 20年度診療報酬改定 データ提出加算の見直し内容
中央社会保険医療協議会 資料より引用
なお、病床規模別に届出割合を比較すると、200床未満の施設の届出割合が低く、中でも療養病床のみの施設が特に低い=グラフ2=。これは、20年度診療報酬改定で200床未満の療養病棟もデータ提出は必須となったが、200床未満の回リハ5・6、療養病棟については、電子カルテシステムが導入されていない等、データの提出が困難である正当な理由があれば、提出しなくても入院料を算定できる経過措置が設けられたことが影響していると思われる。
グラフ2 病床規模別 データ提出加算 届出施設割合
各地方厚生局 届出受理医療機関名簿を基に作成(21年9月調査)
データ提出加算が積極的に届出できない報酬上の理由について考えるため、報酬額を試算した=グラフ3=。100床未満の病院では、データ提出加算はわずか年100万円程度の報酬にしかならない。診療録管理体制加算を届出し、毎月データを作成・提出する負担を考えると、100万円という報酬はあまりに少ない。一方、入院患者数の多い大病院ではそれなりの報酬額になるため、データ提出をしない選択肢はないだろう。
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次回配信は11月10日5:00を予定しています
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