【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
前稿ではコロナ禍における重症患者への対応力について地域に焦点を当て、その実績等を2019年度の病床機能報告データを用いて、改めて整理した。ここで分かったことは、集中治療系病床の整備および利用状況には地域差があり、有効活用できている地域とそうではない地域があることだった。病院としては、濃厚に医療資源を投入する治療室であるから、効率的な利用が大切で、これは医療の質と経済性に直結する問題でもある。また、コロナ禍において日々重症患者数が報道される中で、これらの重症系治療室の重要性が社会に広く認知される結果となった。
ただ、本連載で繰り返し述べてきたように、箱物だけ用意すればよいということではなく、マンパワーの充実が重要で、優秀な医療チームをどう育てていくかが集中治療室のアクティビティを高め、病院経営を成功に導くために必須である。ただ、ICU等はやみくもに整備すればよいということではなく、理想を追いながらも現実を踏まえた病棟構成にすべきである。
本稿では、この大切な治療室を効率的に利用するための視点となるように、届け出する特定入院料やその組み合わせなどに焦点を当て、実態に迫っていく。
前稿では、ICUについて2対1の看護師配置の治療室としたが、ほぼ同じ施設基準であるICUであっても、救命救急入院料2・4あるいは特定集中治療室管理料1・2、特定集中治療室管理料3・4のいずれかを届け出ているかによって、利用実態は異なる可能性がある。救命救急入院料2・4(以下でEICUと記載するが呼称は病院によって異なる)は、ダイレクトインの緊急入院患者が対象となるので、予定手術後の患者は算定対象にはならない。
また、特定集中治療室管理料1・2(ICU上位加算)は、一定の面積要件や人員配置等を満たす場合に1日約14万円の報酬が支払われるわけで、「重症度、医療・看護必要度」も他のICUよりも10%厳しく設定されている。
当然このことは稼働率等に影響を及ぼす可能性がある。また、HCUといっても救命救急入院料1・3か、ハイケアユニット入院医療管理料かによって、予定手術後の患者が対象になるかなどの違いがあり、このことが各病院の利用実態に影響を及ぼすはずである。
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次回配信は9月27日5:00を予定しています
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