【株式会社ジャパンコンサルタント アンド メディカルサービス代表取締役 森清光】
新型コロナウイルスの感染が再び急拡大し、全国で1日当たり2万5,000人、東京で1日5,000人を超える感染者が出るなど、過去最多を更新し続けて極めて深刻な状態となっています。首都圏ではコロナ患者病床が足りず、酸素吸引を必要としない中等症以下の患者の在宅療養を可能にすると政府が決定し、各医療現場などへ通達が出ています。現状のコロナ対策として、緊急事態宣言は感染抑制の意味を成しておらず、頼みの綱とされているワクチン接種においても、デルタ株のブレイクスルー感染報告もあり、仮に、菅義偉首相が掲げた「10月末までに国民の8割接種完了」を実現できたとしても、デルタ株、ラムダ株の感染を抑え込めるかは未知数のため、先行きが不透明な病院経営はしばらく続くとみられます。
このような状況下でも、政府から感じる新型コロナへの楽観的な姿勢や、「ワクチン一本足打法」とちまたで呼ばれているワクチン効果への首相の主張から、再三にわたる自粛要請や緊急事態宣言の効果も発揮されなくなっております。在宅療養の政策をはじめとして、政府や都道府県からの医療機関への通達は、報道後に流れてきている状況です。急な話も多く、今回の在宅療養においても、医療逼迫は予見できたものの、病院やクリニックにとって急な方向転換に対応する時間がありません。報道を見る限り、在宅療養患者の自宅での死亡や、受け入れ病院の決定ができないなど、うまく機能するには相応の時間がかかるだろうと見受けられます。
新型コロナウイルスは感染症2類に相当する上に、今までよりも感染力が強いとされるデルタ株などでは、より一層の感染症対策に気を付けなければなりません。在宅療養者への個別訪問は、クリニックの医師・スタッフが容易にできるものではなく、防護具・酸素濃縮器なども十分に用意される必要があります。医療機関のコロナ患者向けの救急医療管理加算が算定されている上で、かかりつけ医がどこまで対応するかは判断の難しいところでしょう。
また、コロナ患者は急激に容体が変化しやすいとされていますが、在宅療養を遠隔で24時間フォローアップする、ソフトウエアやサービスパッケージを国・都道府県側で用意ができなければ、患者対応は難しいとも考えます。厚生労働省は16日に、コロナ患者を遠隔で診察した場合の保険点数加算について臨時的な取り扱いを発表しましたが、なかなか対応が難しく感じます。
コロナ禍の有事の状況下にある都道府県では、中小病院への新型コロナ患者受け入れ圧力が今まで以上に厳しいものとなり、最低でも発熱外来、在宅往診の受け入れや中等症患者の入院ベッド提供をはじめ、すでに受け入れている病院はコロナ病床の増床といった要請をのまなければ、コロナ禍後の地域医療における病院の存在感にも影響する可能性があります。
(残り915字 / 全2121字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】