【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、20日から緊急事態宣言の対象地域に、茨城、栃木、群馬、静岡、京都、兵庫、福岡の7府県を追加することになった。さらに、31日までを緊急事態宣言の期限としていた東京や大阪などの6都府県を含めて、9月12日までを期限とする13都府県へ拡大された。また、「まん延防止等重点措置」については、20日から宮城、山梨、富山、岐阜、三重、岡山、広島、香川、愛媛、鹿児島の10県が追加され、16道県となった。
感染者の著しい増加に伴い、重症者数も過去最高を記録している。重症者が病床を占めることにより、ICUは平時の2倍以上の人員配置が必要になるし、それに伴い通常医療にも制限を加える必要が起きている。報道でも取り上げられているように、もはや災害レベルであり、この窮状をどう乗り越えていくか病院に期待される役割は大きいが、医療資源には限りがあり、我々、医療機関にこれ以上のことはもはやできない状況になっていると感じる。
本稿では、増加する新型コロナ重症患者への対応に重要である、重症系ユニットの利用実態を改めて明らかにし、この難局を乗り越えた後の、議論の素材を提供したい。
グラフ1-3は、都道府県別の40歳以上人口10万人当たりのICU、HCUおよびその合計病床数である。ICUにおいては、最大と最小の都道府県では10倍の開きがあり、HCUではその差が縮小して4倍となっている。いずれにしろ、集中治療室の届出には地域差があり、重症患者の受け入れが平時であっても円滑に行えない地域があるのかもしれない。
本分析において、ICUは「救命救急入院料2および4、特定集中治療室管理料1-4の2対1の看護師配置の届出」とし、HCUは「救命救急入院料1および3、ハイケアユニット入院医療管理料1・2の4対1あるいは5対1の看護師配置の届出」とした。届出をしている病院を対象にICU・HCUを定義したが、急性期一般入院料で傾斜配置を行い、同様の効果を有する医療機関が存在する可能性もあり、それについては集計の対象外としている。また、分母は40歳以上人口を用いているが、それはICUで92%、HCUで95%が、40歳以上患者であることを理由としている。
このような地域差が生じる要因は、スタッフ配置によるところが大きいと考え、人口当たりのICU病床数と集中治療専門医数の分布を見たものがグラフ4になる。集中治療機能を強化するためには、手厚い人員配置が必要であることは誰しも納得するところだろう。
ただ、貴重な病床を有していても、その有効活用が図れなければ宝の持ち腐れでもある。グラフ5はICUについて、分母を病床数、分子を救命救急入院料2・4および特定集中治療室管理料の算定件数とした算定率である。算定率については100%が理想だが、現実はコロナ前であっても難しいことが読み取れる。この算定率は、病床稼働率とICU入室患者に占める特定入院料の算定率の2つに分解することができる=グラフ6・7=。
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次回配信は9月6日5:00を予定しています
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