【国際医療福祉大学大学院 医療福祉経営専攻 教授 石山麗子】
LIFE(科学的介護情報システム)を活用してPDCAサイクルの循環を実現した、その先にある世界では、ケアマネジメントはどう機能するだろうか。筆者は、複数の角度から考えて、危惧していることが幾つかある。その一つが、LIFEと居宅介護支援事業所のケアマネジャーとの関係である。核心に触れて論じようか? そう考えたこともあるが、センセーショナルな内容を伴うため安易には語れない。誰しも、「できることならそんな話は聞きたくない」というのが心情だ。当事者であるケアマネジャーに直視する気持ちがなければ、見たくない将来予測の話などしても拒絶され、必要なはずの議論はむしろ遠ざけられてしまい、逆効果となる。だから今は時期尚早だと考えてきた。しかし、そうは言っていられない。地殻変動は着実に起きている。
ある会議の一場面での会話である。
「LIFEで情報を分析し、サービス事業所が工夫して成果を挙げた場合、その評価結果はサービス事業所のもので、ケアマネジャーやケアプランの成果ではない」
「LIFEの議論でケアマネジャーは蚊帳の外、と言っては失礼だが、実際にそういう状況にある」
会話の場面は、LIFEを議論する会議ではない。それでもLIFEのことは必ずと言っていいほど話題に上る。これが、昨年度と今年度の研究事業等における議論の大きな違いであり、特徴の一つになっている。LIFE活用後の世界を想定せず、今後の介護事業展開を議論することは、むしろ非現実的だ。おそらく、今年開催される多くの会議に出席する、委員の共通認識だと言えるだろう。
厚生労働省のLIFEの資料には、「アウトカム評価」の文字が示されている。これは近い将来に到来するであろう、報酬の上位概念になることを予測させる。先ほどの会話をもう少し掘り下げて考えてみよう。そこに見え隠れする意図は何か。
まず、介護サービス提供の成果におけるケアマネジメントの寄与度はどの程度か、というデータ分析結果からの観点がある。これを突き詰めれば、LIFEのデータを活用して得られた成果は誰のものかという、報酬の議論につながっていく。
前者の、データ分析におけるケアマネジメントの寄与度を証明することは、容易ではない。なぜなら生活行為関連の変数の種類は極めて多く、変数過剰となり、正確に分析することは難しいからだ。そうなればことさら、直接的に成果を示すことのできる者が評価される可能性は高い。他方、介護の状況をデータ化し、成果もデータで証明する状況が恒常化した場合、専門職なのに成果を示せない職種や事業はどう扱われるのか、今から考えておく必要があるだろう。
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